老化は病的でないレベルの慢性炎症を伴う。慢性炎症の細胞癌化への関与は研究が進む一方、細胞老化と炎症の関連性についてはほとんど分かっていない。近年、感染により惹起される炎症反応が末梢組織に局在する免疫細胞の機能活性化のみならず、骨髄で維持される造血産生の源である造血幹細胞(HSC)を活性化し、老化に類似した機能変化を引き起こすことが分かりつつある。本研究では、炎症を老化の一因と捉え(炎症性老化)、炎症性環境・因子がHSC機能恒常性を変容させ、HSC老化を引き起こす機序を解明する。さらに、HSCの悪性転換、結果的に腫瘍化に至る過程における炎症性因子の役割を明らかにする。加齢変化の新たな特性として慢性炎症に注目し、老化と炎症モデルの相互比較から幹細胞老化の本質理解及び先制医療に向けた新たな老化予防法の確立を目指す。 本研究では、グラム陰性菌の構成分子であるリポ多糖(LPS)の全身投与による細菌感染モデルを用いて、造血制御における造血幹細胞に発現するTLR4シグナルの機能的役割およびその下流シグナル活性化が造血幹細胞の機能変容を明らかにした。
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