研究実績の概要 |
(1) 翻訳アレストにおけるリボソーム外の新生SecM鎖の役割の解明 新生ポリペプチド鎖のリボソーム外領域が翻訳アレストの安定性を変化させることを明らかにした。特に天然のSecMのN末端側配列は、翻訳アレストの安定化に有利であることが分かった。翻訳アレストの安定化機構について詳細に調べるため、新生ポリペプチド鎖のリボソーム外領域に部分欠損や変異を入れた。その結果、57-98残基の領域が必要であることが分かった。この領域のアラニンスキャニング解析を行った結果、疎水性残基のTrp91, Ile90, Phe95、およびαへリックス上で正電荷のクラスターを形成すると予測されるHis84, Arg87, Arg91が翻訳アレストの安定化に寄与していることが分かった。 (2) 翻訳アレスト解除の1分子力学測定 翻訳アレストを起こしてmRNA上に停滞したリボソームに、人工的に負荷を加えて翻訳アレストを解除し、その後の翻訳をリアルタイムで観察した。まず、無細胞翻訳系によりSecM翻訳アレスト複合体(新生ポリペプチド鎖-リボソーム-mRNA)を調製し、新生ポリペプチド鎖とmRNAをそれぞれビーズに結合させ、光ピンセットを用いて両端に負荷を加えた。負荷を加えながら、ビーズの中心間距離の時間変化を測定することで、翻訳アレストの解除および翻訳再開後の翻訳速度を実時間測定した。その結果、数pN程度の負荷を継続的に印加することで、翻訳アレストが解除され、10 codon/min程度の速さで翻訳が起こることを示唆するデータを得た。
|