公募研究
本研究では生育に必須の「新生膜タンパク質の膜組込み過程」に注目して,構造機能解析を行っていく.タンパク質膜組み込み過程には,Sec経路とYidC経路が存在する.どちらの経路においても,タンパク質の認識機構や組み込みに関わるタンパク質の動きに関しての詳細は解明されていない.平成27年度には,Sec経路を構成する輸送体膜タンパク質の構造解析を行い,SecYEG複合体完全長を含む構造について論文にまとめ発表した.構造解析対象のタンパク質は既に立体構造を決定したものであるが,以前とは結晶化における条件を変化させることで分解能の向上および別形態構造決定に至った.得られた新規の構造情報を用いて,分子動力学シミュレーションや変異体解析を現在進行中である.
2: おおむね順調に進展している
Sec経路を構成する輸送体膜タンパク質について結晶構造解析を中心とした機能解析を進めている.SecYEG(細菌型Secトランスロコン)の高分解能(2.7オングストローム分解能)の構造を決定。この構造情報に基づき機能解析し,タンパク質膜透過しない(閉状態)のチャネル(透過孔)が、複合体を形成する膜たんぱく質(SecG)の一部によって「キャップ(蓋)」がされていることを明らかにした。引き続き,シグナル配列との複合体での解析のため,複数の結合候補ペプチドを合成し,混同状態での結晶化を行っている.しかし,これまでのところシグナル配列を含む構造は得られていない.一方,新たに立体構造を決定したSecタンパク質に関して,分解能向上や他状態の構造決定のために,以前とは結晶化における条件を変化させて結晶化,構造決定を行った.得られた新規の構造情報を用いて,分子動力学シミュレーションや変異体解析を現在進行中である.
研究成果を論文にまとめ発表するため,構造情報に基づく各種機能解析を進めていく.ペプチドの認識状態を結晶構造で明らかにするために,共結晶化が必要である.これまでに試したアミノ酸配列では結合が弱いと考えられるため,配列の再検討やスペーサーを介して融合タンパク質として発現させる等して,より結合状態が安定する方法を試みる.YidC シグナル配列の構造解析:YidC については申請者らのグループが2 種類のYidC の構造決定を行った .SecYEG 複合体と同様に, YidC がどのように膜組込み基質タンパク質を認識して機能しているのかについての詳細は未だ不明な点が多い。相互作用の詳細を明らかとすべく基質タンパク質との共結晶化を試みる。基質タンパク質には, YidC の基質と判明しているシグナル領域を用いる。YidC は基質の膜貫通領域付近の負電荷を認識していることが提案されているため,負電荷が存在する膜貫通領域付近の配列をもったポリペプチドとの共結晶化をLCP 法によって進める。X線回折データの収集は,SPring-8 BL32XUの高輝度X線マイクロフォーカスビームラインを用いる.位相の決定は,まず分子置換法を試みるが,構造が大きく変化し,分子置換法で位相の決定が困難な場合は,以前の研究同様に重原子置換体を用いた異常分散法を用いて構造を決定する。YidC再構成Nanodiscを用いた機能解析:基質認識についての構造情報が得られた場合,基質のどこを認識して,基質膜タンパク質を組込んでいるのかの情報を得る。この解析手法が機能すれば,続いてSecYEG 複合体を用いて多数の膜貫通領域をもっタンパク質の膜組込み解析への応用を進める。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件) 備考 (1件)
Cell Reports
巻: 13 ページ: 1561–1568
10.1016
http://www.naist.jp/pressrelease/detail_j/topics/2162/