研究実績の概要 |
CADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)は大脳白質の病変を伴う遺伝性脳小血管病であり、30歳代からの片頭痛発作に始まり、50歳以降で進行性の認知症を発症する。1996年、CADASILの原因遺伝子がNotch3遺伝子であることが報告された(Joutel A, et al.Nature. 1996, 383, 707-10)が、現時点で有効な治療法は見つかっていない。CADASIL型Notch3変異による認知症発症メカニズムは、ミスセンス変異による変性タンパク蓄積が発症要因であると考えられているが、詳細な病態発症機序は不明である。Notch3細胞外ドメインは、リガンドとの結合により、リガンド発現細胞へトランスエンドサイトーシスされ、分解されることが知られている。我々は、Notchリガンド発現細胞とNotch3受容体発現細胞の共培養系を用い、CADASIL型Notch3変異タンパク質の代謝を解析した。その結果、リガンド結合誘導性Notch3細胞外ドメイン分解はリソソーム依存性であり、CADASIL型Notch3変異タンパク質は野生型と比較して、分解を受けにくいことが分かった(図1A)。さらに、新たに作製したCADASIL型Notch3変異をヘテロに持つ16月齢ゼブラフィッシュ個体の脳では、野生型と比較して脳室拡大がみられ、CADASIL症状を示す可能性が示唆された。
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