研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01553
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 佑里 東京大学, 医科学研究所, 助教 (20722573)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / タンパク質分解 / ユビキチン修飾 |
研究実績の概要 |
VCPは前頭側頭葉変性症や家族性ALSの原因遺伝子のひとつとして知られており、VCP変異によりオートファジーを介したタンパク質分解経路に異常が引き起こされる結果、神経変性疾患を発症すると考えられている。VCP変異はユビキチン陽性タンパク質凝集体の蓄積を引き起こすが、何型のポリユビキチン鎖が誘導されているのか解析は行われていない。VCP変異体により誘導されるタンパク質凝集体のポリユビキチン鎖解析のため、VCP変異体を導入した細胞からポリユビキチン鎖を精製し、鎖型特異的な脱ユビキチン化酵素処理を行った。はじめに、野生型VCP発現細胞と比較して、VCP変異体発現細胞においてポリユビキチン化タンパク質が蓄積していることを確認した。その後、Tandem Ubiquitin Binding Entity (TUBE) を用いて精製したポリユビキチン化タンパク質を脱ユビキチン化酵素Otubain-1、AMSH、OTULINで処理した。直鎖状ポリユビキチンを切断するOTULINはVCP変異体誘導性のポリユビキチン鎖には影響を与えなかった。一方、48型ポリユビキチン鎖を切断するOtubain-1と63型ポリユビキチン鎖を切断するAMSHで処理すると、VCP誘導性のポリユビキチン鎖が減少した。以上の結果から、VCP変異体発現により誘導されるユビキチン陽性タンパク質凝集体には、48型と63型のポリユビキチン化タンパク質が含まれていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は1) 神経細胞特異的p47遺伝子欠損マウスの作製と解析、2) VCP変異体およびp47発現抑制により誘導されるポリユビキチン鎖の型の解析を目的として研究を遂行した。神経細胞特異的p47遺伝子欠損マウス作製のために、p47を標的としたfloxマウスとnestin-Creマウスを交配させたが、現在までに神経細胞特異的p47遺伝子欠損マウスを得られていない。VCP変異体により誘導されるポリユビキチン鎖の解析に関しては、ユビキチン鎖の精製と脱ユビキチン化酵素を用いた実験は完了したが、質量分析を用いたポリユビキチン鎖の解析には至っていない。マウスを用いた実験が遅れているため、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
培養細胞を用いたp47発現抑制実験を行う。SHSY-5Y細胞またはU2OS細胞にp47を標的としたsiRNAを導入して、内在性p47の発現を抑制する。p47の発現を抑制した細胞において1) オートファジー不全が起きているかどうか、2) ユビキチン陽性の凝集体が蓄積しているか確認する。また、SHSY-5Y細胞やU2OS細胞にVCP変異体を導入した際に、細胞質においてTDP-43の異常な蓄積が誘導される。そこで、p47発現抑制細胞を核画分と細胞質画分に分画し、細胞質画分においてTDP-43の蓄積が誘導されているかどうかウェスタンブロッティングにより確認する。
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