研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01554
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
清水 重臣 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70271020)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 新規オートファジー / 神経変性疾患 / 脳老化変性タンパク質 |
研究実績の概要 |
加齢に伴って進行する神経変性疾患の多くは、(1)神経細胞における変性タンパク質の蓄積、(2)神経機能の低下、(3)神経細胞死の順で病態が進行し、最終的には不可逆的な神経機能障害に至るものと考えられている。具体的には、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症やパーキンソン病、ポリグルタミン病などが、このような疾患概念に当てはまる。これらの疾患では、変性タンパク質の蓄積が疾患発症の重要な起点となっており、その制御が発症時期や疾患重篤度を大きく左右することとなる。オートファジーの多寡は、老化に伴って増えていく変性タンパク質の蓄積量に影響を与えるために、これらの疾患の発症に深く関わっている。 本研究では、脳老化変性タンパク質の蓄積や認知症発症に、Atg5非依存的新規オートファジーが如何に関わっているかを明らかにするとともに、新規オートファジー調節を介した神経変性疾患治療法の開発研究を行なうことを目的としている。今年度は、新規オートファジーの実行分子Alternative AutophaGy gene (Aag)-3を神経特異的に欠損させたマウスを作製し、解析を行なった。その結果、このマウスは2~3ヶ月令と比較的早期から運動機能の異常を示すことが明らかとなった。即ち、新規オートファジーの破綻により、神脳老化変性タンパク質の蓄積や神経変性疾患を発症することが明らかとなった。 また、新規オートファジーを誘導できる化合物を脊髄小脳変性症モデルマウスに投与したところ、マウス脳における変性タンパク質の蓄積が抑制され、運動機能の異常も改善された。即ち、新規オートファジーの誘導により、神経変性疾患を治療できる可能性がある事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的の一つは、「脳老化タンパク質の蓄積や認知症発症における新規オートファジーの役割」を解明することである。既に、本年度に行なった新規オートファジー関連分子Aag3を脳特異的に欠損させたマウスの解析により、新規オートファジーが、脳老化タンパク質の蓄積や認知症発症に関わっていることを明らかにすることに成功した。 また、もうひとつの目的である「新規オートファジー調節による認知症治療法の開発研究」に関しても、神経変性疾患モデルマウスに対して治療効果を発揮できる新規オートファジー誘導化合物の同定に成功している。 研究開発初年度において、2つの目的を概ね達成しており、進捗状況は良好である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られた成果をさらに、詳細に解析し発展させるために、以下の研究を行う。まず、「脳老化タンパク質の蓄積や認知症発症における新規オートファジーの役割」に関しては、(1)正常神経細胞、新規オートファジー欠損神経細胞に、認知症にかかわる脳タンパク質を発現させて、その分解の多寡を解析する。(2)また、新規オートファジーの破綻によって、ゴルジ体の機能異常が見られる為に、ゴルジ体と変性タンパク質蓄積との関連を解析する。(3)さらに、タウのモデルマウスにおける新規オートファジー活性の変調の有無を解析する。 「新規オートファジー調節による認知症治療法の開発研究」に関しては、上記のタウモデルマウスに新規オートファジー誘導化合物を投与し、病態の改善を解析する。さらに、化合物の標的分子を同定し、薬剤が作用する機序を解析する。
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