公募研究
アルツハイマー病(AD)の原因の一つとして、アミロイド前駆タンパク(APP)の切断に伴うAβの産生と凝集・沈着が知られる。創薬開発の観点から、Aβ産生抑制のためのβセクレターゼ阻害やγセクレターゼ阻害・修飾の研究が進んでいるが、同様にAβ産生抑制につながるαセクレターゼ活性増強効果については不明な点が多い。我々は、膜型増殖因子HB-EGFの結合蛋白質として同定したM16ファミリーメタロプロテアーゼ;nardilysin (NRDc)が、細胞外ドメインシェディングの活性化因子であることを明らかにし、NRDcがAPPのα切断を増強することでAβ産生を減少させることを、in vitro ならびにin vivoの系で明らかにしてきた。NRDcとM16酵素ドメインにおいて高い相同性を持つinsulin degrading enzyme (IDE)は、Aβを分解することでAD抑制効果を持つ。NRDcの酵素活性がAβの分解に必要かどうか、またIDEがα切断増強効果を持つかどうか、それぞれ検討することにした。そこでまず、生体内におけるIDEのα切断活性増強効果を検討するために、IDE E>A過剰発現マウスを作製した。培養細胞にIDEとIDE E>Aを各々過剰発現させ、IDEの基質を用いて酵素活性を測定し、mutant型の酵素活性が確かに低下していることを確認した。ADモデルマウス(APP過剰発現マウス)との交配を終えており、Aβの沈着の程度を検討した。さらに酵素活性欠失型NRDcのノックインマウスを作製し、ADモデルマウスとの交配を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
IDE E>A過剰発現マウスとADモデルマウス(APP過剰発現マウス)の交配により得られたサンプルを解析するところまで進行した。また酵素活性欠失型NRDcノックインマウスについても、作製途中ではあるが当初の計画通りに進んでいる。
M16ファミリーメタロプロテアーゼのADにおける意義を明らかにするため、それぞれの遺伝子改変マウスとADモデルマウスとの交配によって得られたマウスにおけるsAPPα量、Aβ蓄積量を比較・検討するとともに、脳タンパク老化のもう一つの指標であるリン酸化タウタンパクの発現量についても検討する。さらに臨床サンプルにおけるNRDcの発現量について、独自に開発した高感度ELISAを用いて検討し、剖検組織脳における免疫染色を行うことで病期進行の程度とNRDcの発現量に相関があるかどうか検討する。
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