公募研究
本研究課題は概ね順調に進んでおり以下のような実績を上げている。運動症状未発症遺伝子改変マーモセットへのα-syn凝集体の脳内投与実験に関しては、投与に用いるヒト赤血球由来のα-synを得るために、ヒト赤血球からα-synの精製法を確立した。また、家族性PD患者由来iPS細胞を樹立しドーパミンニューロンへの効率的な分化誘導法を確立した。更にこの確立した家族性PD患者iPS細胞由来ドーパミンニューロンでα-synの発現を免疫細胞染色法によって確認した。また、予備検討として野生型マーモセットに対して大腸菌由来α-syn凝集体の線条体への直接投与実験を施行し、周術期の管理条件および安全性を確認した。AAV(アデノ随伴ウィルス)を用いたマーモセットでの解析の予備検討として脳内投与に使用するAAV-9型のウィルスベクターを作成に成功した。これをマウス脳の黒質に直接投与しα-synタンパク質の発現を免疫組織染色法によって確認した。超高磁場MRIにおけるコネクトーム解析に関しては本年度はαsyn tgマウスへのα-syn凝集体の脳内直接投与モデルを用いて予備検討を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当施設ではマーモセット等の霊長類に対する飼育、実験経験が乏しく、全身麻酔を用いたマーモセットへの脳内投与実験は困難が予想されたが、慎重に準備を行った結果、野生型マーモセットに対して大腸菌由来α-syn凝集体の線条体への直接投与実験を施行した。周術期はトラブルなく経過し、手技、処置といった面での安全性を確認できた。また、投与するαsynに関してもヒト赤血球からのα-synの精製法の確立し凝集体の形成に成功した。更に家族性PD患者由来iPS細胞を樹立しドーパミンニューロンへの分化誘導法を確立し、α-synの発現を免疫染色法で確認した。AAV(アデノ随伴ウィルス)を用いた解析においてAAV-9型のウィルスベクターを作成に成功し、マウスへの脳内直接投与を行いα-syn遺伝子の発現を確認した。超高磁場MRIにおけるコネクトーム解析に関しては本年度はαsyn tgマウスへの脳内直接投与モデルを用いて予備検討を行った。以上の通り、本研究課題に関してほぼ予定通り進展していると考える。
マーモセットモデルに関してはαsyn脳内直接投与に関する手技は確認できたが、マウスと異なりn数を多くして実験条件を検討することが困難であるため、今後の実験に関してもマウスモデルで予備検討を行いヒト由来α-synのマーモセット脳内直接投与実験を進めていく。また、家族性PD患者由来iPS細胞からのドーパミンニューロンへの分化、α-synの発現を確認したが、この細胞系からのα-synの精製に関しては未樹立であり、再検討し軌道修正も含め進めていく予定である。AAVを用いた解析に関してはマウスでの発現は確認できたが、マーモセットに関しては未経験であるため、マウスモデルを元に投与経路、投与量を検討し進めていく。超高磁場MRIにおける画像解析は昨年度に始めたマウスモデルの結果を解析し、その結果に基づいて修正を行い進めていく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Neurobiology of Aging
巻: 37 ページ: 103-116
doi:10.1016/j.neurobiolaging.2015.10.001
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 17625
DOI: 10.1038/srep17625