公募研究
認知症含む神経変性疾患の多くは晩期発症性である。このことは神経変性が神経細胞の老化と密接な関係にあることを強く示唆している。しかしながら、神経老化と神経変性を関連付ける分子機構についてはほとんどわかっていない。我々のグループでは、神経老化によるタンパク質分解機構の変容の分子機構を探るため、初代培養神経細胞の長期間培養法を開発し、神経細胞の老化をin vitroで解析することを試みている。これまでに、マウスの初代培養皮質神経細胞の培養条件を検討し、6ヶ月以上の長期に渡り培養することに成功した。長期培養した神経細胞は、培養開始後3.5ヶ月 (14週齢)を過ぎた頃から老化マーカーの一つであるリポフスチンを蓄積し始める。興味深いことに、神経細胞が老化してくると、選択的オートファジーの主要アダプタータンパク質であるp62/SQSTM1の細胞内局在が大きく変化し、S403リン酸化型p62を含むp62 bodyが減少することがわかって来た。このようなp62の局在変化は、従来の培養細胞を使った実験系では全く観察されることがないことから、神経細胞の老化による変容によるものであろうと考えている。引き続き、この現象の原因について解析をすすめていく。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、初代培養神経細胞の長期間培養に成功し、老化神経細胞の実験系を構築することができた。老化神経細胞は、Sudan black Bによるリポフスチン染色により確認することができることも示すことができた。リポフスチン陽性の神経細胞が、老化神経細胞で見られるタンパク質の増減を相関しているかどうかについて結論づけるにはまだ時期尚早ではある。
老化神経細胞におけるバルクと選択的オートファジーの進行状態を、p62のリン酸化状態とオートファゴソーム形成を指標に解析していく。また、神経変性疾患の原因タンパク質、特にTauタンパク質の分解活性について老若で比較する。老化神経細胞で見られる状態を若年細胞で再現することで、老化によらない選択的オートファジーの変容の分子機構について解析する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Hum Mol Genet,
巻: 24 ページ: 4429–4442
10.1093/hmg/ddv179
Neurosci. Res.
巻: 103 ページ: 64-70
10.1016/j.neures.2015.08.002.
PLoS Genet
巻: 11 ページ: e1005503
10.1371/journal.pgen.1005503