公募研究
アルツハイマー病ではシナプス可塑性の障害が指摘されている。近年、経頭蓋磁気刺激法を用いてアルツハイマー病における大脳皮質運動野での可塑性障害の研究がされるようになったが、依然不明な点が多い。本研究では、当院で開発された効率的に可塑性変化を誘導する4連発磁気刺激法(QPS)を用いて、大脳皮質運動野に誘導される可塑性変化を評価することが、認知症早期診断に応用できるか検討している。右利きの認知症患者および正常認知機能高齢者を対象として、認知機能検査とアポE遺伝子多型、髄液中総タウ、Aβ42/40測定、FDG-PETによる脳ブドウ糖代謝測定を行った。左一次運動野へQPSを行い、長期増強(LTP)様効果を検証した。早期アルツハイマー病1名、軽度認知障害3名、正常認知機能2名の記録が終了した。早期アルツハイマー病症例においてアポE4を認め、ほかはアポE3であった。早期アルツハイマー病と2例の軽度認知障害において、髄液中総タウとAD indexの高値を認めた。FDG-PET検査では早期アルツハイマー病において側頭葉内側部の糖代謝低下が疑われた。正常認知機能例では促通性QPSによりLTP様効果を誘導できたが、早期アルツハイマー病や軽度認知障害ではLTP様効果の誘導が障害されていた。QPSを用いて大脳皮質運動野への可塑性誘導を検討することにより、比較的早期の段階でシナプス可塑性の機能破綻を捉えることができ、認知症早期診断に応用できる可能性が示唆された。引き続き研究を継続して症例を蓄積していきたい。
3: やや遅れている
早期アルツハイマー病と軽度認知障害の症例を対象患者として検討を行っている。被験者確保において、研究協力機関である提携病院や医院からの紹介を受けている。前年度に比べ、患者紹介がある程度増加したものの、まだ十分な患者数が確保できていないため、研究がやや遅れている。
対象患者の紹介元の提携病院や医院を増やしており、次第に症例数の確保ができるようになってきたので、今後も継続して研究を進めていく。また病院内の掲示板に研究に関する案内を掲載し、被験者の募集を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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巻: - ページ: -
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