公募研究
認知症の制御には認知症関連蛋白質の発掘は欠かせない。私共は認知症発症の最初期にはシナプス伝達機構の破綻が関与すると考え、AMPA型グルタミン酸受容体を介したシナプス伝達の制御機構に焦点を当てて研究を進めてきた。昨年度は、てんかん関連蛋白質LGI1の欠損が、足場蛋白質PSD-95を介したシナプス伝達制御に必須であることを明らかにした(Lovero、深田ら PNAS 2015)。今年度は、このPSD-95の機能制御を担う新たな分子を探索、同定した(横井、深田ら J Neurosci 2016)。PSD-95は、興奮性シナプスのシナプス後肥厚部(PSD)に濃縮し、AMPA受容体やNMDA受容体、Neuroliginなどを裏打ちし、シナプス伝達やシナプス形成を制御する。PSD-95がPSDに局在するためには、パルミトイル化脂質修飾が必要である。パルミトイル化修飾は可逆反応であり外界刺激に依存して制御される。これまでに私共はPSD-95パルミトイル化酵素としてDHHC2、DHHC3を同定してきたが、脱パルミトイル化酵素に関しては長らく不明であった。今回、私共はPSD-95脱パルミトイル化酵素としてABHD17A、17B、17Cを同定した。そして、ABHD17を海馬神経細胞に過剰発現させると、PSD-95とAMPA受容体のシナプス局在が激減し、樹状突起スパインの数が減少することを見出した。また、これら酵素群をノックダウンするとPSD-95の脱パルミトイル化が有意に阻害されることを見出した。さらに、私共は蛋白質のパルミトイル化状態(ストイキオメトリー)を検出する生化学的手法(APEGS法)を開発した。すなわち、シナプス蛋白質のパルミトイル化状態の変容が脳蛋白質老化の一因になっているかを検討することが可能となる基盤的技術の開発にも成功した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (2件)
Glia
巻: 65 ページ: 150-168
10.1002/glia.23084
Genes Cells
巻: 37 ページ: 94-104
10.1111/gtc.12458
J Neurosci
巻: 37 ページ: 3181-3191
10.1523/JNEUROSCI.3632-16.2017
Neurosci Res
巻: 116 ページ: 39-45
10.1016/j.neures.2016.09.011
Curr Opin Neurobiol
巻: 45 ページ: 1-8
10.1016/j.conb.2017.02.001
巻: 36 ページ: 6431-6444
10.1523/JNEUROSCI.0419-16.2016
http://www.nips.ac.jp/nips_research/2016/06/psd-95.html
http://www.nips.ac.jp/fukata/