ラットに学習を行わせると、学習の習熟に伴い皮質の神経回路再編が起こり、LTP/LTD可塑性変化とともに回路の組織学的形態変化が起こることが知られている。核磁気共鳴法(MRI)の撮像法の一つである水拡散強調画像法は、生体環境内の自由水分子のブラウン運動を計測することで、組織内環境の変化を推定できる。我々は、学習で起こる皮質神経回路の形態変化をMRIで質神経回路の可塑性変化を観察できるか検討した。 我々は、ラットに短期間もしくは長期間のバーンズ空間迷路学習を行わせ、学習の初期と後期で水拡散能の変化を観察した。コントロールとして、その期間中は学習をしない群を別に設けた。 短期間学習は1日2試行×連続2日間(計4試行)、長期間学習は、1日2試行×連続6日間(計12試行)で行った。生体ラット脳のMRI撮像を学習の前後に行い、学習前に対して学習後の皮質水拡散能の変化を算出した。 短期2日間の学習では、1試行目と最終試行(4試行目)を比較すると成績の改善が認められたものの、1週間後には成績が悪化した。長期6日間の学習では、1試行目と最終試行(12試行目)を比較すると成績の改善が認められ、短期2日間学習群よりも成績の改善度が大きかった。1週間後でもその改善が減衰せず保たれていた。短期学習群、長期学習群ともに、学習前に比べて学習後で海馬の水拡散能に変化が認められた。非学習群ではその期間中に水拡散能の変化が認められなかった。短期学習群では水拡散能が低下した。長期学習群では水拡散能が上昇した。 学習の習熟過程で、数日の時間窓で樹状突起スパインが増加しその後除去が起こることが知られている。我々が観察した水拡散能の低下その後の上昇が、その組織学的変化と関係があるのか今後検討する予定である。
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