研究領域 | 構成論的発達科学-胎児からの発達原理の解明に基づく発達障害のシステム的理解- |
研究課題/領域番号 |
15H01576
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
川崎 真弘 筑波大学, システム情報系, 助教 (40513370)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳波 / コミュニケーション / 発達障害 / 情報理論 / 同期現象 / 協調動作 |
研究実績の概要 |
発達障害の一つにコミュニケーション時における他者との協調の困難さがあげられる。本研究では発達障害者がどのような関係性をもって他者とコミュニケーションしているか、それは定型発達者とどのように異なるのか、について他者と協調し合う行動リズムおよび脳波リズムから客観的に評価した。 本研究は、協調コミュニケーション課題時の行動リズム、脳波リズムを計測および同期分析した。この課題では、2被験者が交互または同時にタッピングし、リズムを合わせることが教示される。行動リズムはタッピング間隔で、脳波の周波数位相同期で、評価した。発達障害者に対する実験は京都大学医学部付属病院の協力のもと行った。課題は定型発達者を相手にする条件と様々なリズム変動をするPC(一定のリズム、徐々に変動するリズム、人間の行動リズムを模倣したリズム、極端に変動するリズムなど)を相手に行われた。 本年度は2者間の関係性を示す同期現象に注目して、2者脳波同時計測で他者のリズムに合わせるのがうまい人同士で脳波リズムが同期することを示し、現在論文投稿中である。また、発達障害者を対象にした研究では、2者間の行動リズム同期が異なること、脳波リズムの同期も定型発達者と発達障害者で異なること、コミュニケーション時には発達障害者が認知負荷を抱えていることを示し、これらを論文としてまとめ現在論文投稿中である。また定型発達者を対象にした行動リズム同期および脳波リズム同期に関する研究結果をまとめ現在論文投稿中である。これらの研究は来年度のコミュニケーション時の2者間の関係性を情報理論を用いた数理モデルとして分析し、定型発達者と発達障害者で比較研究を行ううえで重要な基盤となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コミュニケーション時の2者間の関係性を解析するための実験データは計測し終わっている。それぞれのデータに対してトランスファーエントロピーを用いた2者間のリーダー・フォロワーの関係性を特定する解析に必要なプログラムはすでに完成済みであるため、すぐに解析に取り掛かれる準備が完了している。さらに本研究の基盤となる2研究の論文投稿済みであり、本研究の問題点の把握に貢献する。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度計測済みである実験データに対してトランスファーエントロピーを用いた2者間のリーダー・フォロワーの関係性を特定する解析を行う。さらに同期現象に着目した解析を適用する、ほかの因果性に関する解析を適用するなど、別手法との比較も行う予定である。そうすることでうまくいかなかった場合の対応策にもなりうる。 これらの研究結果をまとめ、学会発表を行い多くの研究者と議論をすることで結果のブラッシュアップを試みる、そのうえで英文論文として投稿する予定である。
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