オレキシンの胎動性・呼吸性活動に対する反応性を、オレキシンが発達初期から投射している場所の一つであり、睡眠覚醒機構の要である橋結合腕傍核レベルで調べた。また、呼吸性活動と胎動性活動、さらに睡眠覚醒リズムによる相互連関を調べるため、睡眠覚醒に重要とされているセロトニンによる呼吸や胎動に対する反応性や呼吸と胎動のリズム協調性を解析した。 胎生18日齢では、胎動性活動に対してオレキシンは抑制を示し、呼吸性活動については促進を示した。胎生20日ラットでは、オレキシンにより呼吸リズムが促進された(胎生20日齢では胎動性活動は見られない)。胎生期にもオレキシンが反応している可能性が示唆された。オレキシンにより、呼吸性活動の助長と胎動性活動の抑制がみられることより、胎生期から覚醒フェーズの形成が始まることが示唆された。また、呼吸と胎動のリズムはセロトニンにより活性化し、胎動-呼吸のリズムが同調するが、その同調現象には橋がないと成り立たないこと、光学的測定法で胎動性活動が入力している部位には橋結合腕傍核があり、そこに存在する5-HT1Aレセプターを介してお互いの協調運動が成立していることが、我々の実験結果により判明した。 さらに、妊娠ラットによる胎児の活動も調べたところ、胎生17日から胎生19日までは、胎動性活動の中でも全身を使った大きな運動が多くみられ、胎生20日以降では、全身性運動は消失し、手や足を動かす部分的な運動が見られた。これは、摘出脳幹-脊髄標本で得られた胎動性活動の発達経過とよく似ていることや、ヒト胎児22-24週の胎動性活動との共通点が明らかとなり、ラットとヒトの胎動性活動を指標とした相互相関性を見つけることに成功した。以上の結果より、ラット摘出脳幹-脊髄標本の胎動性活動と呼吸性活動における睡眠覚醒による反応性をヒト胎児の研究と関連付けて研究する事が可能となる手法を見い出した。
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