研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
15H01594
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
前田 義昌 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30711155)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛結晶化ペプチド / 珪殻タンパク質 / 微細構造 / バイオミネラリゼーションペプチド |
研究実績の概要 |
本研究では、珪藻細胞壁(珪殻)の微細構造が生み出す栄養源の取り込み機構のメカニズムを解明し、それを規範として、物質が拡散する方向にバイアスをかけ、一定の方向に輸送することのできる微細構造を有した材料の開発に展開することを目指す。 珪藻は地球上のあらゆる水圏環境に適応し、最も繁栄した生物の一つである。その理由として、周期的な微細構造を有する珪殻が物質拡散方向を制御して、栄養源の取り込みに寄与している可能性があることが示唆されている。しかし、どのような微細構造がその機能を生み出しているかは不明である。これを解明し、模倣材料を開発することができれば、栄養輸送脳の高い細胞培養固体培地やイオン輸送効率の高いリチウムイオン電池材料など、様々な応用が期待される。 平成27度までに、珪殻タンパク質Frustulin1をアンカー分子として用いることで、羽状目珪藻Fistulifera solarisの珪殻状に効率的に機能性ペプチドをディスプレイする方法を確立した。本手法を用いて酸化亜鉛結晶化ペプチド、金結晶化ペプチド、酸化チタン結晶化ペプチドをディスプレイさせる遺伝子組み換えベクターをそれぞれ構築し、パーティクルガン法を用いた導入を行った。酸化チタン結晶化ペプチド、金結晶化ペプチドをディスプレイした形質転換体の作出には既に成功し、無機結晶前駆体を混合した培地を用いた培養を開始している。酸化チタン結晶化ペプチドをディスプレイした形質転換体においては、ペプチドをディスプレイしていない野生株と比較してチタン沈着量の増加が確認されており、細胞表面の性状改変が成功していることを示す結果を得ている。一方で、高分解能電子顕微鏡を用いた観察において、酸化チタン結晶の形成を確認することはできていない。これは、沈着した酸化チタンが結晶とならず非晶質として存在しているためであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子工学的に珪藻珪殻の表面を改変し、無機塩前駆体を含む培地中で培養することで珪殻上に無機ナノ結晶を形成し、その結晶成長方向から物質輸送に関与する珪殻微細構造を探索する予定である。昨年度において珪藻珪殻の表面改変に関する技術開発に関しては概ね完了することができた。一方で、期待していた無機ナノ結晶の成長は見られず、非晶質のまま沈着する様子が観察された。珪殻表面に提示するペプチドや培地に加える前駆体のの種類や量を再検討する必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、珪殻表面改変技術の確立を行い、酸化亜鉛結晶化ペプチド、金結晶化ペプチド、酸化チタン結晶化ペプチドのディスプレイに成功している。しかし、酸化チタンに関しては珪殻微細構造内における結晶化を確認することができなかった。そこで、その他に形質転換体の作出を完了している酸化亜鉛結晶化ペプチドおよび、金結晶化ペプチド提示珪藻をそれぞれの前駆体を含む培地で培養し、珪殻微細構造内における結晶化を目指す。その際に、培養時間、培地に転嫁する前駆体濃度、培地のpHなどについて網羅的に検討し、結晶化促進を図る予定である。
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