研究領域 | 生物多様性を規範とする革新的材料技術 |
研究課題/領域番号 |
15H01599
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安井 隆雄 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00630584)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ナノワイヤ / セミの翅 / 細胞膜 |
研究実績の概要 |
初年度は、セミの翅の表面構造の物理的防御機構を解明するために、新規ナノデバイスの試作・検討を進めた。 セミの翅の物理的防御機構を解明するための新規ナノデバイスのナノ構造体には、ナノピラー構造体やナノワイヤ構造体、ナノウォール構造体等を試作した。これら構造体からナノワイヤ構造体が作製の容易さや、作製可能構造体の範囲の広さより適していることが明らかとなった。ナノワイヤ構造体と細胞膜破砕のメカニズムを体系的に理解するために、(1)ナノワイヤ構造体の直径・長さ・アスペクト比・間隔(ナノワイヤ疎密)・配置パターン の物理的要因と、(2)ナノワイヤ構造体の材料(ZnO/Al2O3/SiO2/SnO2)・表面特性(親水性・疎水性)・表面への官能基付与の化学的要因が異なるナノワイヤ構造体の作製に着手した。 (1)の課題においては、ナノワイヤ構造体を規則正しく配置したパターンや乱雑に配置したパターン、乱雑なナノワイヤ構造体群をアレイ状に規則正しく配置したパターン等のパターンが異なるワイヤを作製した。また、作製時のシード層のメタルを変更することで、ナノワイヤの直径・長さ・アスペクト比・配向性が異なる構造体も作製に成功した。(2)の課題においては、作製したナノワイヤ構造体にコアーシェル構造となるように、様々な酸化物(ZnO/SnO2/SiO2/Al2O3)を付与することで材料・表面特性が異なるナノワイヤの作製に成功した。表面への官能基付与は、ペプチド修飾によって作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成27年度は、(1)ナノワイヤ構造体の直径・長さ・アスペクト比・間隔(ナノワイヤ疎密)・配置パターン の物理的要因と、(2)ナノワイヤ構造体の材料(ZnO/Al2O3/SiO2/SnO2)・表面特性(親水性・疎水性)・表面への官能基付与の化学的要因が異なるナノワイヤ構造体の作製を行っただけでなく、平成28年度に行う予定であったナノワイヤ構造体をポリジメチルシロキサン(PDMS)に埋め込みにも前倒しで着手を行うことができた。 (1)の課題においては、当初の計画通りに、ナノワイヤ構造体を規則正しく配置・乱雑に配置・アレイ状に規則正しく配置したパターンを作製することに成功した。また、ナノワイヤ作製時のシードとなる層の金属種を変更することで、ナノワイヤ構造体の直径・長さ・アスペクト比・配向性を自在に制御可能であることを見出した。 (2)の課題においては、作製したナノワイヤ構造体にコアーシェル構造となるように、様々な酸化物(ZnO/SnO2/SiO2/Al2O3)を付与することに成功した。これら構造体はSTEMとEDSによって確認済みである。表面への官能基付与は、ZnO認識ペプチド修飾によって作製に成功した。 前倒しで行ったPDMS埋め込み型デバイスは、粘着性を有する素材であるシリコーンゴムであるため、バスの手すり等の公共の場所へ容易に使用することが可能であることが確認された。また、PDMSを剥がした後、他の場所へ容易に再度貼り付けすることが確認でき、繰り返しの使用や長期間の使用にも耐えることが可能であることを見出した。 以上の理由より、「(1)当初の計画以上に進展している」に該当すると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成27年度に引き続き、ナノワイヤ構造体をPDMSに埋め込み、薄いシート状のナノシートデバイスを作製することを達成する。そして、本デバイスを用いて、細胞膜破砕の処理能力、時間、正確性などを検討し、性能評価を行う。また、(1)ナノワイヤ構造体の直径・長さ・アスペクト比・間隔(ナノワイヤ疎密)・配置パターンの物理的要因と、(2)ナノワイヤ構造体の材料(ZnO/Al2O3/SiO2/SnO2)・表面特性(親水性・疎水性)・表面への官能基付与の化学的要因、の組み合わせを様々に変えることで、セミの翅の防御機構を超える新規ナノ材料の開発を目標とする。最終的には、体系化したナノワイヤ構造体の物理的・化学的パラメータを基に、細胞を効率的に破砕することが可能な接着性シート状デバイスのナノシートの創製を目標とする。
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