公募研究
名古屋大学情報連携統括本部(大学院情報科学研究科併任)の森健策教授(連携研究者)により,医用画像処理と3Dプリンタに基づき3D臓器オブジェクトが作成された。加えて,3D臓器オブジェクトを用いた手術に実績を持つ名古屋大学大学院医学研究科の伊神剛講師が,連携研究者として,本プロジェクトに参加し,同講師が自ら手術を執刀すると同時に,同講師が中心となって,手術を行う病院,術者,患者との調整を行った。参与観察では,3D臓器オブジェクトが手術に持ち込まれることにより,メンタルモデルシェアリングのためのインタラクションパターンがどのように変化するのかを検討した。6例の手術事例を記録した。術中の行動,および発話の記録は,2台のカメラで行われた。手術台上方から患部を狙うカメラ,および側方から術者全員の動きを記録するカメラにより映像データを記録し,前者のカメラに設置された集音マイクにより,術中の発話データを記録した。さらに,1名の記録員が手術室に入り,ハンドカメラ,および音声レコーダを携帯することで,補助的データを収集した。これらのデータに基づき,エスノブラフィカルな分析を行った。それぞれの参加者が持っているメンタルモデルを同定し,3Dオブジェクトの機能を明らかにした。実験研究では,参与観察で観察された3Dオブジェクトの機能が,要因を統制する実験においても同様に発現されるのかを確認するために,一般大学生を実験参加者とする実験を行った。手続き実験材料として,実際の肝臓の構造を簡略化した上で,血管,腫瘍等を内蔵する仮想肝臓を設定した。実験では,仮想肝臓の血管や腫瘍の位置を推定させた。具体的には,複数の特定の断面における血管や腫瘍の位置,それらの相対的位置などを測定した。分析の結果,2Dのバーチャルイメージに対して,3Dオブジェクトが,参加者の空間的推論を促進することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた参与観察,および統制実験を終了し,分析の結果,良好な結果を得ている。また,いくつかの会議で,成果を発表している。
当初の予定通り,医師を実験参加者とする実験を実施する。実験を通して,専門的知識が,3Dオブジェクトの機能の発現にどう関与するかを議論し,3Dオブジェクトの機能と熟達の関係を検討する。
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