研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
15H01615
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森田 純哉 名古屋大学, 未来社会創造機構, 助教 (40397443)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自伝的記憶 / 認知アーキテクチャ |
研究実績の概要 |
認知アーキテクチャと写真ライブラリ(MacのiPhotoなど)を接続する写真スライドショーを構築した。このスライドショーは、人間の記憶特性(学習曲線、忘却曲線、類似や近接による連想)に基づいて、自動的に写真ライブラリに含まれる個別の写真をつなげていく。個人の写真ライブラリに含まれる写真は、自伝的記憶と密接に関係するライフログである。よって、認知アーキテクチャのパラメータを調整することで、個人に最適化された記憶と情動の喚起を促すことができると考えた。本研究課題では、この写真スライドショーを観察することの心理的な効果を検討しつつ、認知モデルベースのインタラクティブシステムを実現していく。 27年度は、認知アーキテクチャベースの写真スライドショーの心理的な特徴を定性的に検討することを目的とした。研究代表者の写真ライフログにより構築されたスライドショーを、第三者に観察してもらい、その人間らしさや興味深さを評定させる実験を実施した。結果、いずれの評定項目に関しても、ベースラインとして設定されたランダムな写真スライドショーとの差を確かめることができなかった。この結果から、自伝的記憶を共有しない他者による写真スライドショーの評定における困難さが明らかになった。 上記の問題から、ケーススタディとして、研究代表者の母親を対象とした実験を実施した。対象者自身の写真ライフログから構築された写真スライドショーを観察してもらい、感じたことを発話させた。結果、認知モデルベースの写真スライドショーを観察した場合、ランダムな写真スライドショーに比べ、対象者による発話がストーリーのようにつながり、また写真スライドショーに対して語りかける発話や人格を付与する発話がなされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り認知アーキテクチャを利用したスライドショーを実現し、研究代表者の母親を対象とした一人称的なユーザ実験を実施した。生体信号を利用したインタラクティブな写真スライドショーを実現するために、参加者本人が撮影した写真を観察させ、脳波を計測・分析する研究も進めている。
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今後の研究の推進方策 |
キー入力と脳波を使ったインタラクティブな写真スライドショーを構築しユーザ実験を実施する。 実験参加者の人数を増やすため、ユーザの私的な写真ライブラリを実験材料とするのではなく、ユーザに一定期間の写真収集をさせる実験を実施する。
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