研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
15H01616
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
三浦 純 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90219585)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ロボットを介した作業知識伝達 / ヒューマン・ロボット・インタラクション / ロボットによる作業教示 / インタラクションのモデル化 |
研究実績の概要 |
本研究では,ロボットを介して人から人への組立作業の作業知識を伝達するというタスクを用いてヒューマンインタラクション(HI)研究を行う.そのために,(1)人からロボット,および(2)ロボットから人への2段階の教示を実現し,それらを組み合わせてロボットを介した作業知識伝達を実現する.今年度は主に(2)の部分に取り組み,以下の研究を行った. (a)人から人への作業伝達行動の観察システムの構築:人が人へ積木組立作業の教示を行っているシーンを観察し,組立作業動作,およびジェスチャや発話によるインタラクションを自動的に認識・記録するシステムを構築した. (b)作業実行のための認識,計画,行動システムの構築:人型ロボットを用いて組立作業を行うための物体の認識と位置推定,ハンド動作の自動計画,およびロボット制御を行うシステムを構築し,さまざまな積木組立作業が実行可能であることを確認した. (c)インタラクションのモデル化:(a)の解析結果を分析し,ジェスチャや発話によるインタラクションは伝達された知識のあいまいさによって駆動されると考え,あいまいさを陽に記述できるDempster-Shafer理論に基いてインタラクションのモデル化を行った.積木作業におけるあいまいさの表現法・推定法とあいまいさを解消するためのインタラクション計画のアルゴリズムを開発した. (d)上記の(b)(c)を組み合わせて,ロボットが人に作業を教示できるシステムを構築し,その基本機能を確認した. また,人からロボットへの教示については,2人の作業者による共同組立作業を対象として,人の組立作業を観察しロボットの振舞いを学習するProgramming by Demonstrationシステムを構築し,その基本機能を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(初年度)は,まず(a)人から人への作業伝達行動の観察システムの構築を行い,ロボットから人への教示においては,(b)作業実行のための認識,計画,行動システムの構築,(c)人の作業知識理解のあいまいさを基にしたインタラクションのモデル化,(d)ロボットが人に作業教示を行うシステムの構築を,人からロボットへの教示については,2人の作業者による共同組立作業を対象にした,Programming by Demonstrationシステムを構築した.
当初の計画では初年度にロボットを介した作業知識伝達システムの基本システムの構築を予定していたが,2年目に予定していた作業理解度の推定および理解度向上のためのインタラクション計画のアルゴリズムの検討を先に行ったため,基本システムの構築には至らなかった.しかしながら,あわせて共同作業を対象にした人からロボットへの作業伝達システムの開発を行っており,その成果を適用して,今回取り扱っている積木作業における人からロボットへの作業教示の実現に必要な機能要素はほぼ実装できている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度(最終年度)はまず,人からロボットへの積木作業教示システムを構築し,前年度構築したロボットから人への作業教示システムを組み合わせて,ロボットを介した作業知識伝達システムを実現する.さらにそのシステムを用いて2人の人がロボットを介して伝言ゲームのように作業知識を伝える実験が行えるようにする.
一方,作業理解度の推定法および理解度に基づくインタラクションの生成において,人からロボットへの教示に対しても拡張を行うとともに,発声やジェスチャなどの明示的な行為だけでなく,動作の停留など無意識的に生じる振舞い等の他の情報も含めて理解度推定やインタラクション生成を行うことを検討する.
さらに構築したシステムを用いて,インタラクションの内容を変えながら作業知識伝達の正しさや効率を評価し,インタラクションの良さを定量的に評価する手法を開発するとともに,利用者による主観的評価もあわせて作業伝達システム全体の評価も行う.
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