公募研究
今年度はまず、NMR実時間解析を行い、APOBEC 3G(A3G)が一本鎖DNA(ssDNA)の上をスライディングすることを支える相互作用について調べ、その成果を学術論文として発表した(Front. Microbiol.,2016,in press)。A3Gの脱アミノ化活性、3’→5’極性、構造の安定性に関してpH依存性を調べた結果、pH6.5 - 11.5において、pHが低いほど脱アミノ化活性及び3’→5’極性が高いことが明らかとなった。これは、我々がこれまで蓄積して来たデータ、つまりA3Gが静電相互作用に支えられてssDNA上をスライディングしている、ということを強く裏付ける知見である。また高速AFMを用いて、A3GがssDNA上をスライディングする姿を実際に観察することを試みた。まず、3000ヌクレオチド程度の一部二重鎖DNAを含むDNAとA3Gを混合して、計画班安藤先生のグループのご協力のもと、高速AFM観察を行った。その結果、A3GがssDNA上をスライディングする姿を観察することができた。ただし、はっきりとした観察像は現在のところまだ一つ得られたのみであるので、観察例の数を増やす必要がある。今回、問題点及び改善の指針が得られたので、DNAのデザイン及び溶液条件を含めた観察条件の検討をはじめたところであり、現在のところ順調に進行している。他方、我々が得意とするNMR法及び解析法を活用する新たな研究を、計画班村田先生のグループのご協力を得ながら開始することが出来た。我々はこれまで機能性核酸について、構造機能相関解析をNMR法により行って来た。しかし、細胞内での機能性核酸の構造機能相関解析の研究例は世界を見てもほとんどない。そこで、in-cell NMR解析を開始した。核酸のin-cell NMRについてはこれまでアフリカツメガエル卵母細胞を用いた例があるのみであるが、我々はヒトの培養細胞にDNAやRNAを導入してNMRスペクトルを得ることに成功した。
2: おおむね順調に進展している
これまでA3Gの活性及び3’→5’極性についてNMR実時間解析を行い。A3GはssDNA上をスライディングし、それが静電相互作用に支えられていることを示した。今年度は、A3Gの脱アミノ化活性、3’→5’極性、構造の安定性に関して、pH依存性を調べた。その結果、pH6.5 - 11.5において、pHが低いほど脱アミノ化活性及び3’→5’極性が高いことが明らかとなり、A3Gはやはり静電相互作用に支えられてssDNA上をスライディングしている、ということが示された。以上の成果で得られた実験的な知見は、高速AFM観察の条件検討にもそのまま活かすことが出来る。計画班安藤先生のグループのご協力を得ながら、今年度は高速AFMによるスライディングの観察を試みた。ssDNAとしては3000ヌクレオチド程度の一部二重鎖DNAを含むDNAを用いた。そして、A3GがssDNA上を実際にスライディングする姿を観察することに成功した。しかし、はっきりとした観察像は現在のところまだ一つ得られたのみであるので、観察例の数を増やす必要がある。今回用いた系についていくつかの問題点が浮き彫りになった:ssDNAは凝集し高次構造を形成する傾向がある;A3GがssDNA上を移動するとssDNAがマイカから外れる;ssDNAの動きが大きい;A3GがssDNA上、どちらの方向に動いたか明確ではない。そこで、DNAのデザイン及び溶液条件を含めた観察条件の検討をはじめ、先の問題点を全て解決する系に思い至った。現在準備を進めているところであるが、順調に進行している。我々はこれまでさまざまな機能性核酸やタンパク質:核酸複合体についてNMRを主に用いて構造・機能・分子運動解析を行ってきた。新学術領域研究に参加することで、計画班村田先生のグループのご協力を得ることができ、機能性核酸のin-cell NMR解析に向けた新しい研究をはじめることが出来た。今回ヒトの培養細胞にDNAやRNAを導入してNMRスペクトルを得ることに成功した。
高速AFMによるA3Gのスライディングの観察については、今年度得られた知見に基づいて観測条件の改良を重ねていき、種々の疑問を明らかにする:A3Gがスライディングする方向;A3GのssDNAに対する結合の向き;ssDNA配列及び構造依存性;溶液条件の効果など。NMR動的構造解析を進行させる。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 10件、 招待講演 2件)
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