公募研究
本研究では、in vivoでの動態機能解析、X線結晶構造解析およびクライオ電子線トモグラフィー法による構造解析、さらにin vitroでの生化学的機能解析法を上手く組み合わせることで、フック完成シグナルに伴う輸送装置の基質認識モード切り替え機構を原子レベルで解明することを目的としている。本年度の主な成果は以下に示す。1. FliH-FliI ATPase複合体のX線結晶構造解析に成功。さらに、結晶構造をベースにした機能解析により、FliHとFliIの相互作用に直接関わる重要な残基を同定。 2. 反転膜ベシクルを用いたin vitro輸送アッセイ系の構築に成功。さらに、ベシクル内に55 nmの長さのフックを作ることに成功。 3. 分子物差しとして機能するFliKのN末領域に光感受性のフェニルアラニン誘導体であるp-benzoyl-phenylalanine (pBPA) をFliKのN末端近傍領域(FliKN)に導入することに成功。さらに、UV光の照射によってFliKNがフックキャップ蛋白質FlgDおよびフック蛋白質FlgEと特異的に光架橋物を形成することを確認。4. 高速AFMによりFlhAのC末細胞質ドメイン(FlhAC)が9量体リングを形成することが判明。5. FlhACとFliH-FliI複合体の動的な相互作用により、べん毛構成蛋白質の輸送の順番が巧みに制御されることが判明。6. FliKがFlhBCとμMオーダーで結合することを確認。さらに、FlhBCがFlhACとμMオーダーで、FliIとはnMオーダーで結合することも確認。
2: おおむね順調に進展している
高速AFMによりFlhACの開閉運動および9量体リング形成過程を可視化することに成功。さらに反転膜ベシクルを用いてベシクル内に55 nmのフックを作ることに成功した。しかしながら、フックシグナリング複合体の結晶は未だ得られていない。
光感受性のフェニルアラニン誘導体であるp-benzoyl-phenylalanine を導入したFliKCがUV光の照射によってFlhBCおよびFlhACと光架橋物が形成されるかどうかを調べる。FlgDおよびFlgEと特異的に光架橋物を形成できたFliKをin vitro輸送アッセイ系に使用することで、フック構築中にFliKがフックキャップやフックと相互作用することで分子物差しとして機能しているかどうかを確認する。高速AFMによるFlhACの動的構造解析と遺伝学的機能解析法をうまく組み合わせることで、FlhACリング形成と輸送装置の選択物質輸送の関連性を詳細に解析する。FlhACとフックシグナリング複合体のコンポーネントとの複合体の精製及び結晶化を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
MicrobiologyOpen
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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