時間分解蛍光和周波測定装置について、光学系の高度化を行った。特に、非線形光学結晶下流でのバックグラウンド光を除去のために新たに設置したレンズ・スリット光学系が威力を発揮し、生体試料からの微弱な和周波光を定常的に測定可能となり、とリゾチームからの和周波測定に成功した。320~370 nmにおける1~500 psの蛍光強度測定から、トリプトファン蛍光の動的ストークスシフトを再構成できた。さらに、量子化学計算から励起状態にあるトリプトファンの電荷分布を推定し、の蛍光強度への静電相互作用の影響を検討した。水中リゾチームの分子動力学計算トラジェクトリーから、水分子の双極子とトリプトファンの双極子の相互作用が、動的ストークスシフトの主要因となっていることを、初めて明らかにすることができた。 これまでに構築した経験的水和分布関数を、通常の分子動力学計算で使用されている分子力場で再現できるのか?どの水分子モデルがこの関数を再現できるのかを、短いペプチドの分子動力学計算によって検討した。その結果、sp2混成軌道を有する脱プロトン化した酸素原子と窒素原子においては、それらの孤立電子対を考慮することが、水和分布関数の際現に不可欠であることが明らかとなった。また、水分子モデルでは、TIP3PとTIP4Pモデルが、水和分布関数を良く再現できることも明らかとなった。この研究結果は、従来の分子動力学計算による蛋白質の動的構造研究や、創薬における分子結合シミュレーションの再考を促す衝撃的なものであった。 結晶構造解析による植物青色光受容蛋白質の立体構造解明を目指してきたが、良質な結晶が作出できないため、電子顕微鏡による単粒子解析によるアプローチを行っている。また、電子顕微鏡による蛋白質の構造解析の応用として、ドメイン運動を行う蛋白質の構造多形を可視化することを試みた。
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