公募研究
DNA複製・修復・組み換えは、種の遺伝的連続性を保証する最も重要な機構である。これまで、これらの機構に関与する数々のタンパク質の同定と構造解析がなされ、詳細な生化学的解析に基づいて反応機構のモデルが提唱されてきた。一方、実際これらのタンパク質が機能する多数のサブユニットからなる複合体の3次元構造やダイナミクスに迫ること困難なこともあり、様々なタンパク質分子の相互作用ダイナミクスについては不明な点が多く残されている。そのダイナミックなプロセスの理解には、直接タンパク質が機能している現場を可視化することが鍵となると考え、これまでDNA結合タンパク質1分子を直接イメージングしてきた。大腸菌のDNA修復機構で機能する非六量体型ヘリカーゼUvrDについては、単量体ではなく二量体あるいは三量体でDNAを巻き戻していることを明らかにしている。本研究では、このヘリカーゼがDNAを巻き戻す際に形成する過渡的な多量体の動的構造を蛍光1分子イメージングで解明することを目指している。平成27年度は、ヘリカーゼUvrDの多量体のタンパク質-タンパク質間相互作用の構造ダイナミクスとDNA巻き戻し活性の関係を探るために、UvrD間の1分子FRETをイメージングした。また、ヘリカーゼUvrDの多量体構造の光検出磁気共鳴(ODMR)による解明に向けて、蛍光ダイヤモンドナノ粒子の表面修飾とタンパク質への標識を試みるとともに、顕微鏡本体・励起レーザー・超高感度カメラなどからなる蛍光1分子イメージング顕微鏡にODMRを発生させるのに必要な高周波発生関連の装置を組み込み、磁気共鳴-蛍光1分子イメージング顕微鏡の構築を行った。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究計画をほぼ遂行したため。
1分子FRETイメージングに関してはヘリカーゼUvrDのC末アミノ酸の存在が多量体形成に与える影響を明らかにする。光検出磁気共鳴(ODMR)イメージングに関しては、構築した顕微鏡と標識したヘリカーゼUvrDを用いて、DNA巻き戻しの際に形成されるヘリカーゼUvrDの多量体のDNA上での構造や動きを詳しく調べる。
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Scientific Reports
巻: 5 ページ: 18177
10.1038/srep18177