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2015 年度 実績報告書

オートファジー始動複合体の動的構造解析

公募研究

研究領域動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する-
研究課題/領域番号 15H01651
研究機関公益財団法人微生物化学研究会

研究代表者

藤岡 優子 (野田優子)  公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 研究員 (80399964)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワードオートファジー
研究実績の概要

オートファジーの進行には多数のAtgタンパク質群が必要だが、それらの殆どは飢餓条件下、PAS(pre-autophagosomal structure) に局在し、分解対象を包む膜である隔離膜の形成に働く。飢餓時には、脱リン酸化状態のAtg13がキナーゼであるAtg1と結合し、さらにAtg17-Atg29-Atg31複合体が結合することにより5者複合体(Atg1複合体)が形成される。細胞内ではAtg1複合体は数十コピーからなる高次の多量体を形成することでPASの足場を形成し、オートファジーの始動に働くと考えられているが、その構築基盤は未だ不明である。本研究では、実際にPASの中核として機能する状態のAtg1複合体の動的構造を明らかにすることで、PASの実体および形成メカニズムを明らかにする。Atg1複合体の構成因子は天然変性領域を多く含み、さらに高次多量体を形成することから、従来型の構造生物学の枠を超え、高速AFMの手法を最大限活用する。
本年度はAtg13-Atg17複合体のX線結晶構造解析とAtg1複合体を構成するタンパク質の、個々の高速AFM像の取得を予定していた。Atg13-Atg17複合体のX線結晶構造解析に関しては高分解能の回折データを得てモデル構築を完了した。また、高速AFM像の取得に関しては測定条件の検討を繰り返し、X線結晶構造解析では知ることのできない天然変性領域の良好な像を得ることに成功している。また、X線結晶構造解析によって明らかになったAtg17の特徴的なS字構造を、高速AFMでも観察することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上記の通り、本年度はAtg13-Atg17複合体のX線結晶構造解析とAtg1複合体を構成するタンパク質の、個々の高速AFM像の取得を行った。Atg13-Atg17複合体のX線結晶構造解析に関しては、大型放射光施設で高分解能の回折データを取得するとともに、各種プログラムを用いて構造計算を繰り返すことによってモデル構築を完了し、Atg13-Atg17複合体の立体構造を決定することに成功した。加えて、得られた立体構造情報を元に、in vitroおよびin vivoで機能解析実験を行った。その結果、研究計画を立案した時点で考えていたAtg13-Atg17間の二点結合による高次多量体形成モデルについて実証することに成功した(論文投稿中)。一方、高速AFM像の取得に関しても、測定条件の検討を繰り返すことによって、X線結晶構造解析では知ることのできない天然変性領域の良好な像を得ることに成功した。Atg17の高速AFM像の取得はかなり難航したが、条件検討によってX線結晶構造解析によって明らかになった特徴的なS字構造を観察することに成功した。

今後の研究の推進方策

Atg1複合体の各構成因子を測定することに成功したので、引き続きAtg13にAtg17-Atg29-Atg31複合体を加えた場合、Atg13にAtg1を加えた場合など、2因子間の相互作用を高速AFMで観察する。Atg13はAtg17結合領域を二ヶ所持つが、一方しか結合できない変異体を用いることでそれぞれの結合領域がAtg17と相互作用する過程をリアルタイムで観察する。Atg13のIDRのうち、Atg1結合領域はAtg1との結合により二本のへリックスが誘起されることが結晶構造解析からわかっている。Atg13のIDRとAtg1との相互作用を高速AFMにより詳細に解析することで、Atg1との結合に際してIDRにヘリックスが誘起される過程の可視化を試みる。続いて二ヶ所の結合領域を含むAtg13とAtg17-Atg29-Atg31複合体との相互作用を高速AFMで観察し、Atg13がAtg17同士を架橋していく過程をリアルタイムで追跡する。さらにAtg1も添加することで5者複合体全体の高次多量体構造の観察も目指す。同時観察する因子が増えると、因子間の区別が難しくなることが予想される。各因子に異なる蛍光タグを付加し、領域内で開発が行われる蛍光顕微鏡の高速AFMへの応用技術を活用することで、因子間の区別を明確にした高速AFM測定も試みる。最終的には、高速AFMで得られた知見に基づき、in vivo、 in vitroでの機能解析を行う。
一方、当初の研究計画にはなかったが、リン酸化状態のAtg1の高速AFM像の取得時、予想外にN末端構造とC末端構造が結合して閉じたかたちをとっていることが明らかとなった。本年度の研究によりリン酸化Atg1が高次多量体形成能をもたないことが明らかになったところであり、非常に興味深い知見である。そこで、リン酸化状態のAtg1のX線結晶構造解析を含めた構造、機能解析も同時に進めていくことにする。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Structural Basis of the Differential Function of the Two C. elegans Atg8 Homologs, LGG-1 and LGG-2, in Autophagy.2015

    • 著者名/発表者名
      Wu F, Watanabe Y, Guo XY, Qi X, Wang P, Zhao HY, Wang Z, Fujioka Y, Zhang H, Ren JQ, Fang TC, Shen YX, Feng W, Hu JJ, Noda NN, Zhang H
    • 雑誌名

      Molecular Cell

      巻: 60 ページ: 914-929

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2015.11.019.

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Atg1 family kinases in autophagy initiation.2015

    • 著者名/発表者名
      Noda NN, Fujioka Y
    • 雑誌名

      Cellular and Molecular Life Sciences

      巻: 72 ページ: 3083-3096

    • DOI

      10.1007/s00018-015-1917-z.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] オートファジーの始動を制御する複合体の立体構造2015

    • 著者名/発表者名
      藤岡優子,野田展生
    • 雑誌名

      日本結晶学会誌

      巻: 57 ページ: 191-197

    • DOI

      10.5940/jcrsj.57.191

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] プレオートファゴソーム構造体の中核複合体のin vitro再構成と性状解析2015

    • 著者名/発表者名
      藤岡優子, 山本 林, 鈴木 翔, 大隅良典, 野田展生
    • 学会等名
      BMB2015
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県 神戸市)
    • 年月日
      2015-12-01
  • [学会発表] PASの中核複合体のin vitro再構成と溶液構造解析2015

    • 著者名/発表者名
      藤岡優子, 山本 林, 鈴木 翔, 能代大輔,有坂文雄, 安藤敏夫,大隅良典, 野田展生
    • 学会等名
      第9回オートファジー研究会
    • 発表場所
      淡路夢舞台(兵庫県 淡路市)
    • 年月日
      2015-11-16
  • [備考] 微生物化学研究所 HP

    • URL

      http://www.bikaken.or.jp/

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公開日: 2017-01-06  

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