研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
15H01653
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
古川 亜矢子 横浜市立大学, 生命医科学, 特任助教 (90453050)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | DNAのメチル化 / 酵素反応 |
研究実績の概要 |
ゲノムインプリンティングは、由来した親の性別によって対立遺伝子のどちらが発現するかが決定される機構である。インプリント遺伝子発現の調節を行うのは、メチル化酵素(Dnmt3a)による精子あるいは卵子における異なったDNAのメチル化状態である。生化学的な実験から、インプリント遺伝子領域の時間経過と共に変化するメチル化状態は一度メチル化が入るとその位置から順番にメチル化されているような規則性がある。しかしながら、詳細なDnmt3aによるメチル化の順序や反応性は解析されていない。そこで、H19の転写開始点の上流2kbには、CpG配列に富む特徴的な繰り返し配列を含む30 bpのDNAに対するDnmt3aのメチル化反応を解析する。まずは、メチル化反応を追跡する手法を確立するために、Dnmt3aと同じCpG配列をメチル化する大腸菌のメチル化酵素M.SssIを用いて実験を行った。標的DNAをNMR試料管内に入れた後に、メチル基供与体のSAMとメチル化酵素を添加してメチル化反応を開始させ、シトシン5位に付加されるメチル基のNMRシグナルの増加をリアルタイムに追跡した。DNAや蛋白質に対して、SAMは過剰量必要であることが分かった。測定方法は、いつくかの測定法を検討した結果、NOESY法が最も適していた。標的配列CpGが両鎖に1つずつの場合は、両鎖のメチル化は、同程度の反応速度であった。一方、H19の配列を用いた場合は、複数あるシトシンのメチル化される反応速度は異なっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NMRで検出可能な酵素反応条件を検討するのに、少し時間がかかった。メチル基供与体SAMの濃度や反応に必要なBufferのシグナルによって感度が落ちるため、その検討などを行っていた。 酵素活性を保持している蛋白質の調製の検討にも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
H19配列に対するDnmt3aのメチル化反応をリアルタイムNMR法で解析する。続いて、長鎖DNAでもメチル化反応を追跡可能であるかどうかを検討する。最終的にはヌクレオソーム上でのDnmt3aの作用機序を調べるため、601配列にH19配列をつなげた長鎖DNAを調製し、昨年度確立したリアルタイムNMR法でメチル化反応を解析する。 15N,13C標識したDnmt3aの酵素活性ドメインを調製し、全残基の化学シフトを帰属する。そこに、CpGを含まないDNAを滴下していきNMRのシグナル変化を残基ごとに解析し、非特異的結合型構造の情報を取得する。同様に、CpG配列を1個含むDNA、複数含むDNAを用いて滴定実験を行い、異なるDNAを滴下した時のDnmt3aのシグナルの変化の違いを残基間で比較する。異なるDNAを用いることによって、非特異的結合型構造と特異的結合型構造の存在比を変化させ、両者の構造情報を分離する。この実験を、Dnmt3aの基質となるSAMを加えて行い、メチル化反応型の構造情報も得る。更には、これらDNA及びSAM存在下でのDnmt3aの緩和分散実験を行い、動的構造変化を解析する。
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