公募研究
イオン透過型グルタミン酸受容体の一つ、AMPA受容体の活性化・脱感作に伴う速く複雑な動的機能構造を、電子顕微鏡および高速原子間力顕微鏡により活写する。脂質二分子膜中という生理条件に近い機能構造を捉え、その複雑な機能発現過程を理解し、脳機能の分子メカニズムを明らかにする。試料については、AMPA受容体の発現コンストラクトは、ヒトグルタミン酸受容体遺伝子ライブラリーより作成した、hGluA2emを用い、精製、界面活性剤可溶化状態での電子顕微鏡解析を進めている。高速原子間力顕微鏡については、開発者であり計画班の金沢大学安藤教授主催の講習会に参加し、基礎的な技術を習得した。また、現所属で所有する装置での実験を開始した。固体基板上への固定方法が最も重要であり、現在はその条件検討を行っている。脂質二分子膜中でのクライオ電子顕微鏡法については、脂質二分子膜のモデルを最適化するための画像処理方法について検討を加え、カリウムイオンチャネルの構造をサブナノメートルの分解能で決定することに成功した。試料、原子間力顕微鏡観察、クライオ電子顕微鏡法について上記の実績を踏まえ、最終年度に当たる平成28年度には、AMPA受容体の動的機能構造の活写を達成する。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の達成度としては概ね順調に進展していると考えている。動的構造解析を行う上で、結晶化のための安定化を促進するようなループの欠失を元に戻した蛋白質を安定に生産する体制が整った。高速原子間力顕微鏡は現所属所有の市販品でも、試料の固定化条件を検討するには問題ないことを確認できている。現有のクライオ電子顕微鏡は、安定に稼働しており、自動化測定を行うことで、幾つかのプロジェクトで高分解能構造解析を実現している。画像解析についても進展があり、これまでよりも正確な処理が可能となり、三次元再構成の分解能が上がってきている。平成27年度に達成したものは基盤的な要素を組み合わせることで、本研究課題を達成するための準備が整ったと言える。
平成28年度は最終年度となるために、二つの方針を並行して進める。すなわち、より生理的な条件としての脂質二分子膜中での解析を、高速原子間力及びクライオ電子顕微鏡で進める一方、データ取得の効率の良い界面活性剤可溶化状態の試料での大量データ取得を行い、画像解析により三次元再構成により構造アンサンブルを獲得する。これらの構造を元に、実際に、分子動力学シミュレーションを試みる。より生理的な条件での解析は、原子間力顕微鏡によるリアルタイムな動的構造の滑車を達成することに注力する。AFM基板上での脂質二分子膜の再構成について、検討を加え再現性を上げることができれば、AMPA受容体分子の大きさは十分観察可能であることはすでに予備実験で確認済みである。分子動力学シミュレーションに関しては、計画班の名古屋大学Tama教授の指導のもと、低分解能データの組み合わせから構造変化を合理的に理解するために、ノーマルモード解析を導入したソフトウエアを用いて、動的構造の滑車を実現する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
Journal of Structural Biology
巻: 194 ページ: 49, 60
doi.org/10.1016/j.jsb.2016.01.012
Structure
巻: 24 ページ: 272, 276
doi.org/10.1016/j.str.2015.12.007