イオン透過型グルタミン酸受容体の一つ、AMPA受容体の活性化・脱感作に伴う速く複雑な動的機能構造を、電子顕微鏡および高速原子間力顕微鏡により活写することを目的として取り組んだ。電子顕微鏡による解析では、機能と構造を同一試料から解析することを目的とし、脂質小胞に再構成した試料を用いる。この試料は、高速原子間力顕微鏡での観察の際に、固体基板上に脂質二分子膜を再構成する際に用いることが可能であるため、蛍光測定による機能解析、電子顕微鏡による構造解析、そして高速原子間力顕微鏡による動態解析を同一試料で行うことが可能になる。27年度より高速原子間力顕微鏡観察のための脂質二分子平面膜の基板上での再構成に取り組んできたが、モデルタンパク質である抗体分子を観察することは出来ていない。国内でも複数の研究者が取り組んでいることから、今後はそれらの研究成果を取り入れ動態解析の基盤を確立する。 電子顕微鏡解析については、確立されているAMPA受容体の精製系を立ち上げ、精製に成功している。その一方で、モデルイオンチャネルとして、安定かつ大量に精製が可能なKv1.2βカリウムイオンチャネルを用いて、電子顕微鏡画像解析方法の確立を果たした。米国エール大学Fred Sigworth教授との共同研究として、画像解析に数理モデルを導入した手法を確立し、28年2月に誌上発表した。また、膜蛋白質の機能構造を韓国のグループとの共同研究で同時期に誌上発表している。さらに、A01公募班の東京大学矢島准教授との共同研究で、細胞骨格結合型モーター蛋白質の作動原理を明らかにし、28年8月に誌上発表した。 脂質膜上での膜蛋白質の動的機能構造を明らかにする解析法は現在、膜貫通領域の二次構造を分離して解像する事に成功しており、これをAMPA受容体脱感作状態に適用することで構造多型を明らかに出来ると考えている。
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