研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01661
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
島 圭介 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50649754)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能的電気刺激 / パターン認識 / 関節運動リハビリテーション / 筋電位 |
研究実績の概要 |
本研究では,関節運動リハビリテーションにおいて2者間で関節運動と筋収縮パターンを電気刺激を用いて伝達する新しい方法論を構築することを目指して研究を実施した. 本年度は,多チャネルの電極を関節運動に参画する各筋表面に貼付し,被験者の動作意図を筋電位から推定して適切な筋収縮パターンを電気刺激として別の被験者に与える基礎的な方法論を構築した.具体的には,多チャネル電気刺激が関節運動に及ぼす影響を計測し,与える電流と関節角度の関係性を指数関数でモデル化できることを示すとともに,その関節運動モデルを用いて適切な電極位置を選定できる可能性をしめした.さらに,一方の被験者から計測した筋電位から関節運動を推定し,もう一方の被験者に電気刺激として与えて2者間で関節運動を伝達できること,また,片麻痺患者を想定して健側から患側への動作伝達や,動作時のわずかな筋収縮情報を用いた動作の増幅が可能であることを示した[SSI2015, SI2015口頭発表など]. そして,被験者の筋電位から高精度に関節運動を推定する新しい確率モデルを考案し,ニューラルネットに展開することによって高精度な動作識別と誤動作の防止が可能なことを示し,提案する動作伝達法に組み込むことで安全かつ効率的なインタラクションが可能なことを確認した[ロボティクスシンポジア口頭発表など].さらに,指先への電気刺激と指腹への圧覚刺激を組み合わせることによる新しい反力提示デバイスを提案し,基礎的な力覚提示実験により有効性を示した[AROB2016口頭発表など].
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2者間で関節運動と適切な筋収縮状態を伝達するため,多チャネル筋電位からの動作推定法,多チャネル電気刺激による関節運動誘発法,それらを組み合わせた関節運動の伝達法の基礎理論を既に確立している.また,様々なケース,身体部位において関節運動と筋収縮状態を伝達可能なことを示すことに成功した.これらの基礎理論を実現したプロトタイプシステムは共同研究機関において実証実験を既に進めており,提案法が患者の関節運動リハビリテーションにおける身体機能・脳機能へ与える影響の評価・検証段階へ既に進んでいる.さらに,基礎理論を応用した反力提示デバイスへ研究テーマを発展させられる可能性を示し,リハビリテーションをはじめとするさまざまなアプリケーションに提案法が有用であることを示した. この結果は,関節運動リハビリテーションにおける療法士,患者双方のインタラクションを円滑に進められる可能性を示唆しており,運動学習に効果的な新しい方法論の確立に大きく寄与するものである.
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今後の研究の推進方策 |
確立した電気刺激モデルに基づいて,各被験者に適切な電気刺激位置を選択可能な方法論を実現するために,マルチアレイ電極を用いた電気刺激の実現と筋骨格モデルに基づく電極選定法を考案することを目指す.また,提案法のリハビリテーションへの有効性を検証するため,実患者に提案法を適用することによって身体機能および脳機能におよぼす変化,ならびに運動学習の効果を検証する.さらに,電気刺激が被験者の知覚特性に及ぼす影響を評価することで,知覚と運動学習の効果について詳細を検討する予定である.
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