本論文では人工拇指を製作し、それを用いた物体搬送作業において、触覚フィードバックの有無による作業性の比較を行った。まず,触覚センサを備えた身体拡張拇指(ERT)と親指位置計測装置(TMC)、電気刺激装置を製作し、ERTを用いボルトのピッキング実験を行った。この作業は、テーブル上の9本のボルトを被験者は左手小指・薬指とロボット拇指を使い掴み、右側の所定の位置に置く。9本のボルトを移動する作業を1セットとし、電気刺激による触覚フィードバックが有る場合で10セット、触覚フィードバックが無い場合で10セットの合計20セット行った。電気刺激による触覚フィードバックが有る場合はタスク処理時間が7.2%短くなった。また、ピッキング時の把持失敗回数は触覚フィードバックが無い場合では平均2回であったのに対して、フィードバックが有る場合はどの被験者も0回であった。この結果は触覚フィードバックが把持状態を的確に伝えることができ、ERTをより正確に操作には重要であると言える。また、実験後のアンケートでは被験者のほぼ全員が「電気刺激がある方が操作がしやすかった。」、「電気刺激が触覚のように感じた。」と回答した。アンケートの質問項目以外も触覚フィードバック有りの場合では、「実験後、右親指を動かすと左指が勝手に動いてしまった。」、「右親指が左手に移動したような感覚があった。」、「右腕がなくなるような感覚になった」といった意見が被験者から寄せられ、電気刺激による感覚フィードバックの効果を確認した。
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