公募研究
難治部分てんかんの外科治療には、てんかん焦点の切除と同時に焦点周囲の脳機能の温存が大切であり、病態による機能可塑性を加味した包括的な脳機能マッピングが必要となる。てんかん焦点が機能野近傍に位置する場合や非侵襲的検索では焦点の同定が難しい場合、硬膜下電極の慢性留置による侵襲的術前評価を行う。皮質電気刺激の手法は、脳機能マッピングの中核検査として位置づけられている。slow dynamicsによる脳機能可塑性(代償機構)がみられた慢性期での評価となる病巣研究とは対照的に、刺激介入による効果は一過性(~5秒)で限局性(1x1~2 cm)であり、代償機転を伴わないfast dynamicsによる障害(変容)が評価できる。言語優位半球の外側前頭葉・頭頂葉に電極留置した難治部分てんかん患者で同意が得られた5名を対象として、道具使用にかかわる左前頭葉・頭頂葉ネットワークの同定、fast dynamicsによる変容の解明をめざした。定性的な高頻度皮質電気刺激の手法を用いて、高次運動課題中に下頭頂葉に介入した。道具使用パントマイムの課題遂行障害が見られた電極は、縁上回前方領域に集族した(PF野)。刺激効果は選択的で、道具の呼称、実際の道具使用、親指と人差し指の反復運動、到達運動では障害は誘発されなかった。低頻度皮質電気刺激(1 Hz)を用いた電気的線維追跡法(CCEP)により、同部位は腹側前頭前野(中心前溝周囲)と結合し、道具使用にかかわる行為関連ネットワークを形成していた。解剖学的には、確率論的トラクトグラフィーの検討から、上縦束第3枝を介していた。一方、腹側運動前野の高頻度皮質電気刺激の症状は、頭頂葉と異なり、親指と人差し指の反復運動が停止するといった陰性運動反応がみられ、行為関連ネットワーク内の腹側運動前野と下頭頂小葉の2領域で機能的相違が示された。
2: おおむね順調に進展している
申請時の研究計画に予定していた、高・低頻度の皮質電気刺激研究から、道具使用にかかわる左前頭葉・頭頂葉ネットワークを同定し、ヒトではじめて、ネットワーク内の機能分担をfast dynamicsによる変容の観点から明らかにすることができた(国際学会発表、論文準備中)。同時にCCEPの手法で、脳内身体表現の礎となる、背側前頭葉・頭頂葉間の皮質間結合の同定に着手できた(国内学会発表)。今年度後半から、これらの高次運動課題下の脳活動(広帯域脳律動)の計測をはじめ、低頻度(ネットワーク)・高頻度(fast dynamics)皮質刺激の結果との照合から、行為の企図・遂行にかかわる脳内身体表現マーカーの同定に着手した。また、本年度後期に導入した3次元モーションキャプチャーシステムを用いて、介入時の運動制御の変容(fast dynamics)の定量的評価を開始できた。
本年度は、高・低頻度の皮質電気刺激研究から、道具使用にかかわる左前頭葉・頭頂葉ネットワークを同定し、fast dynamicsによる変容を明らかにした。皮質皮質間誘発電位(CCEP)を用いて、脳内身体表現の礎となる、背側前頭葉・頭頂葉間の皮質間結合の同定に着手した。次年度は、臨床神経科学(術前脳機能評価や術後代償機転解明)へのフィードバックを視野に入れ、1)3次元モーションキャプチャーを用いた、急性介入(単一ないし複数領域)による行為ネットワークのfast dynamicsによる変容の定量的評価2)対象症例を蓄積し、低頻度(ネットワーク)・高頻度皮質刺激(fast dynamics)の結果との照合から、道具使用をはじめとした様々な行為にかかわる脳内身体表現マーカーの同定、を推し進め、3)A01-1, A02-1班と連携を密にとり、「右」前頭葉・頭頂葉ネットワークが担う運動主体感・身体意識・自己意識にかかわる脳内身体表現マーカーの同定、fast dynamicsによる変容の解明、および脳病態・脳切除によるslow dynamicsへの遷移に焦点をあてて、共同研究を推進する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 3件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 11件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (27件) (うち国際学会 5件、 招待講演 10件) 図書 (9件) 備考 (2件)
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