研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01667
|
研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
宮田 麻理子 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (70281631)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 神経損傷 / 体性感覚 / 三叉神経 / 視床 / 大脳皮質 |
研究実績の概要 |
末梢神経損傷は脳内神経回路の改編をもたらす。例えば上肢を切断した場合には、それに伴い脳内身体表現が変容する。そして、脳内身体表現の変容過程において、時として失ったはずの腕を認識する幻肢や、さらに痛みを伴った幻肢痛と呼ばれる症状を呈することが知られている。我々はこれらのメカニズムの解明を目指し、遺伝子改変マウスを用いて、特定の神経経路を可視化、制御し、脳内身体表現の変容過程を調べてきた。最近、末梢神経切断により、視床ヒゲ感覚領域 (V2 VPm核)における上行性支配様式が複数化すること、さらにその変化が1週間以内という時間軸で起こることを明らかにした[Takeuchi Y. et al. (2012) J Neurosci 32: 6917]。 本研究では、ヒゲ感覚領域の内側毛体線維のみを蛍光タンパクで標識した遺伝子改変マウスを作成することにより、ヒゲ感覚神経 (V2) 損傷により新たに動員された神経線維が三叉神経核のヒゲ以外の領域や後索核といった部位に起因することを明らかにした。さらに神経損傷によりV2 VPm核の神経細胞が下顎領域 (V3) や背部に受容野を持つように変化することを発見した。また、神経損傷群では、VPm核の神経細胞の活動様式がよりバースト様になっていることも明らかにした。 さらに本年度は新たに内因性シグナルを用いたin vivo光学脳機能イメージングシステムを立ち上げ、神経損傷によって脳内身体表現がどのように変容するのかを可視化できるようになった。その結果、神経損傷により痛みに関連した経路が活性化するという知見を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は遺伝子改編マウスを用いた解剖学的な解析も順調に進展し、新たな段階であるin vivo計測系(電気生理およびイメージング)の立ち上げ、さらに光遺伝学的手法の導入も順調に進み、重要な知見が得られつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度では新たに立ち上げたin vivo計測系および光遺伝学的手法を用いて、末梢神経損傷がもたらす脳内身体表現の変容過程を明らかにし、異所痛などのメカニズムに迫る。
|