公募研究
末梢神経損傷により脳内神経回路の改編が起きる。その際、異所性疼痛と呼ばれる症状が見られることが知られていたが、そのメカニズムはよく分かっていなかった。そこで我々は特定の神経集団が標識された遺伝子改変動物の利点を活かし、視床内求心性線維の改編が異所性疼痛に関与している可能性を示した(Takeuchi et al., eNeuro, 2017)。さらに、大脳皮質レベルで神経回路改編の過程を観察するため、前年度に内因性シグナルを用いたin vivoイメージングシステムを立ち上げ、マウスのヒゲ感覚神経損傷により大脳皮質のdysgranular領域が活性化することも明らかにした。本年度はこの領域が痛覚受容に関連した領域であることを証明するため、疼痛誘発物質であるカプサイシンをヒゲパッドに注射し、大脳皮質の当該領域が活性化するのかを神経活動の活性化マーカーであるc-Fosの発現により調べた。その結果、dysgranular領域の第4層でc-Fosの発現が上昇しており、dysgranular領域が痛覚受容に関与していることが明らかになった。また、感覚入力の失われた経路の中枢側がどのように変化するのかを経時的に観察するため、三叉神経主知覚核とその求心性線維である内側毛帯線維にChR2を発現したマウスを作成し、in vivoにおいて内側毛帯線維を選択的に光刺激することで、末梢神経損傷時に大脳皮質においてヒゲ感覚領域がどのように変化・退縮するのかを観察した。従来は、ヒゲ感覚領域を損傷すると大脳皮質ヒゲ感覚領域(バレル皮質)の活動は低下し、領域が縮小すると考えられていた。しかし、実験結果では、ヒゲ感覚領域の退縮は観察されず、活動が維持されていることが分かった。これは腕を失った場合に、腕の感覚が存在し続ける「幻肢」のメカニズムに迫る知見であると考えられる。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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eNeuro
巻: 4 ページ: -
https://doi.org/10.1523/ENEURO.0345-16.2017
Neuron
巻: 91 ページ: 1097-1109
10.1016/j.neuron.2016.07.035