研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01669
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
向野 雅彦 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (30424170)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 姿勢制御 / 動的バランス評価 / 動作分析 |
研究実績の概要 |
リハビリテーションの臨床において、動作中のバランス維持の能力は日常生活活動の自立に必要不可欠であるが、その評価については臨床スコアによる評価が中心となっており、客観的な評価手法は限られているのが現状である。本研究では、三次元動作分析と足圧測定を同時に行うことにより、動作中のバランス維持機能の客観的な評価指標を作成することに取り組んだ。 側方のバランス制御は力学的には重心(COG)と足圧中心(COP)の側方の位置関係が変化することによって加速度が発生し、制御されることで説明されている 。本研究では、この関係性を指標化することを目的に、三次元動作解析装置Kinematracerおよびフォースプレートを使用し、足圧と三次元計測の同時測定によるバランス能力測定の仕組みの構築に取り組んだ。検討の結果、ステップ動作を課題動作とし、側方への仮想重心位置の変位と足圧中心の側方への変位を記録することで計測値からCOG-COPの関係性の指標化に取り組んだ。 健常人5例における測定結果に基づいた検討の結果、本研究では逆方向への加速度発生の契機となる踵接地から対側の踵接地までの期間において足圧中心が重心よりもどれだけ外側にあったかを一つの指標として妥当性を検討することとした (Averaged (|COP|-|COG|) subtraction value: ASV)。脳卒中片麻痺患者9例を対象に、予備的な検討としてASVの測定とバランス機能の臨床スケールであるBerg Balance Scale (BBS)との比較を行ったところ、両者に高い相関関係が得られており、ASVが動的なバランス機能の指標としての妥当性を備えている可能性が示唆された。今後さらに詳細な検証の上で臨床への応用可能性についても検討を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、計測の仕組みの確立と検証の実施を目標としていたが、概ね計画通りに検証を行うことができた。また、予備的な計測データから、バランス機能をよく反映すると思われる計測指標の候補についてもいくつか作成することができた。 ただし、計測数は妥当性の検証に十分とは言えず、今後より大きな集団での検証およびより詳細な指標化の検討を予定している
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、より多くの症例で測定の信頼性と妥当性を検討するとともに、足圧中心の移動速度や反応時間、体幹の代償動作等、バランス機能に関わる機能を指標化することによって、バランス機能をより多面的にとらえることのできる仕組みの構築に取り組む。さらに新領域のグループ内での連携によって、バランス機能障害の回復過程、介入による変化のシミュレーションが可能となるよう姿勢制御システムのモデル化を試みる予定である。客観的な計測を基礎とした姿勢制御システムのモデル化により、将来的に脳科学分野との連携が可能な環境を作成することを目標とする。
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