研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01670
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
谷口 忠大 立命館大学, 情報理工学部, 准教授 (80512251)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 身体図式 / 身体地図 / ベイズ推論 / ノンパラメトリックベイズ / 木構造推定 / クラスタリング |
研究実績の概要 |
本研究の目的はベイズ潜在木構造生成過程による脳内身体表現スローダイナミクスを説明するモデルを明らかにすることである.人間は自らの四肢を動かし身体をコントロールするが,このモデル表現はしばしば多リンク系として表される.この表現は人間の身体の状態を縮約的に表現する意味において妥当かつ簡便であり,ロボティクス等において伝統的に用いられてきた.同時に,人間がそのような内部モデル,つまり,脳内身体表現の状態空間モデルを構築していると考えるのも妥当であり,人間の身体行動,認知過程の分析はこの状態空間表現に基づいてなされてきた.しかし,身体運動を表現する状態空間そのものを人間がいかに獲得しているかは自明ではない.通常,身体のリンク系をグラフ構造で示した際には閉路を持たない.故に,本研究では身体のリンク構造が木構造であると仮定し,その生成過程として木構造生成過程を仮定する.潜在的な木構造が存在し,そこからの感覚情報(観測)が生成されるという生成過程に基づき,その観測からモデルの潜在変数をベイズ推論することで脳が潜在的な木構造を学習していると考え,このスローダイナミクスを明らかにすることを目指した. 初年度の成果としては,A. 身体地図学習のためのシミュレーション環境の構築,B. 触覚情報からの多リンク系のリンク数の自動推定の実現,C. 木構造のベイズ推論を行うDirichlet Process Gaussian Mixture Model with Latent Joint の提案を行った.これらを用いて,シミュレーション上で動作する胎児のモデルと見立てた多リンク系ロボットが自らの触覚情報のみから,自らの身体の木構造を推定することがある程度推定可能であることを明らかにした.この成果は査読付き国際論文誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書において,27年度は(1) ベイズ潜在木構造生成過程の生成モデルの開発,に取り組むものとしていた.より具体的には,(1-1)感覚運動情報の因果性を考慮した低次元表現の形成手法の開発,(1-2)木構造生成モデルを潜在変数としたクラスタリング手法の開発,(1-3)ベイズ潜在木構造生成過程に基づく脳内身体表現推定手法の開発,を行うこととしていた.これらに関して概ね完成を見ることができた.(1-3)についてはさらなる検討を行う必要があるが,概ね基礎的な成果を得ることが出来たと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に示した通り,28年度は(2)エージェントシミュレータを用いたベイズ潜在木構造生成過程の有効性検証,(3)ヒューマノイドロボットを用いた脳内身体表現獲得実験,に取り組んでいく. また,新学術領域の会議等を通じて,(4)視覚情報や自己受容感覚との統合,(5)幻肢痛の構成論的モデル化,といった研究課題に関しても,その必要性が認識されるに至ったため,これらに関しても並行して取り組んでいく.
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