公募研究
映像遅延装置システムを用いて,失行症における身体性の変容を定量的に明らかにすることを研究目的とした.加えて,身体性の変容が運動パフォーマンスおよび運動関連脳領域に与える影響を,映像遅延装置システムを用いて明らかにすることを目的とした.研究1: 脳卒中を罹患した患者22名を,失行評価に基づき,失行群(7名)・偽失行群(6名)・非失行群(9名)に分類することができた.その結果,触覚刺激と受動運動における遅延検出閾値(delay detection threshold:DDT)と遅延検出確率曲線の勾配(steepness)に群間差は認めなかった.一方,能動運動では,失行群は,偽・非失行群と比較して,DDTの有意な延長とsteepnessの有意な低下を示した.また失行重症度と能動運動条件におけるDDT/steepnessとの間には,有意な相関関係を認めた.これらの結果から,失行症には,motor predictionsの障害があることを示唆した.研究2:健常者を対象に,運動-感覚不一致による身体性の変容と共に生じる運動学的変化および運動関連脳領域の活動変化を捉えることを目的とし, 実験を行ったところ,主観的知覚である身体の損失感,重さ及び疲労は,遅延時間の延長に伴って有意に増大した.また,運動リズム及び筋活動量は遅延時間増大に伴って有意に緩慢化・減少した.さらに,対側一次運動野の運動関連電位の振幅ピーク潜時は遅延時間増大に伴って遅延する傾向にあった.本研究では,運動-感覚の不一致が主観的知覚の変容をもたらすだけでなく,運動リズムおよび筋出力にも影響を与えることを明らかにした.加えて,その背景には運動関連脳領域の活動変化が関係していることを示唆する結果を得た.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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