研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01673
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
吉田 正俊 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (30370133)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 半側空間無視 / 機能回復 / 上側頭回 / 上縦束 / 脳機能イメージング |
研究実績の概要 |
半側空間無視は脳の限局した部分の障害というよりは、脳内ネットワークの失調であると考えられるようになってきている。半側空間無視の動物モデルはいまだ確立していない。しかし近年の解剖学的研究からは、マカクザルにも注意の背側経路と腹側経路に相同な神経ネットワークがあることが示唆されている。そこで本研究では1) マカクザルでの背側注意経路の相同部位、または背側注意経路の相同部位を離断することによって半側空間無視の動物モデルを確立する。2) 視線計測と頭部のトラッキングを用いて、半側空間無視のモデル動物で網膜中心座標、頭部中心座標での処理がどのように影響を受けているかを解明することを目的とした。 以上の目的のため、二頭のニホンザルで全身麻酔下で上縦束(SLFII)または上側頭回(STG)に損傷を作成した。空間無視の評価法としては、ケージ内でのタッチパネルを用いた行動課題を行った。この課題は診断で用いられる線分末梢課題をサル用に調整したものであり、点灯する色パッチの中から特定の色のパッチに触れると報酬が与えられる。半側空間無視の患者では、線分末梢課題において眼と頭を自由に動かしてよいのにもかかわらず、損傷と対側にあるターゲットを検出することに失敗する。2頭のサルで損傷後一ヶ月にわたって同様な行動が見られたことから、無視症状が起きていることを明らかにした。また、アイトラッカーを用いた視線計測も行った。モンキーチェアに座っているサルの眼前にディスプレーを設置して動画を見せた。半側空間無視の患者では、眼と頭を自由に動かしてよいのにもかかわらず、損傷と同側の画面に視線が偏位することが知られている。2頭のサルで損傷後一ヶ月にわたって同様な行動が見られたことから、無視症状が起きていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2頭のサルにおいて右上側頭回への損傷実験を行い、半側空間無視の行動評価法を確立し、損傷によって無視症状が見られることを明らかにしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本研究の第三の目的である「機能的MRイメージングなどの方法を用いて、半側空間無視の症状と機能回復過程がどのような脳内ネットワークの機能障害と関連しているかを神経生理学的に明らかにする」を目指して、機能イメージングデータの取得に注力する。 機能的MRイメージング法を用いて半側空間無視モデル動物の安静時脳活動(resting-state fMRI)を記録する。イソフルラン麻酔下で生理学研究所にあるSiemens Allegra (3T)を使用してBOLD活動を計測する。ヒトにおける背側および腹側注意ネットワークと相同な経路の結合性が脳損傷とそれからの回復でどのように変化するかを明らかにする。
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