研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
15H01674
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村田 弓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 研究員 (80512178)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 可塑性 / リハビリテーション / 随意運動 / 把握動作 |
研究実績の概要 |
脳損傷後の機能回復メカニズムを明らかにするために、内包後脚に損傷を作成した動物モデルを確立し、回復過程を調べた。母指と示指で小さな物体を保持する精密把握(つまみ動作)が可能な動物であるサルを対象に、第一次運動野の手領域からの下行路が通る内包後脚に血管収縮作用を持つエンドセリン-1を投与し、局所的な微小梗塞を作成した。梗塞後数ヵ月間にわたってつまみ動作の回復過程を調べるとともに、MRI画像により損傷部の体積の変化を調べた。梗塞作成後には、つまみ動作を含む手の運動に障害がみられた。特に、精密把握の障害が長期間続き、示指で引っ張るなどの代償的な把握動作を使う個体も見られた。また損傷後のMRIT2 強調画像に置いて内包後脚に高信号部位が認められたことから、内包後脚を中心とした脳領域に浮腫などが生じて脳組織がダメージを受けていることが示唆された。梗塞作成後2週間から1ヵ月後にはMRI画像の高信号部位が減少した一方、つまみ動作の使用頻度は回復しなかった。画像上では損傷が確認できなくなっても、損傷による影響は持続しており、協調した手の運動の遂行に影響を与えていることが推察された。また、Nissl染色を用いて損傷後の神経細胞の変化を調べた。特に、内包損傷後の損傷半球第一次運動野の錐体細胞の細胞の大きさの分布変化について調べた結果、損傷後には正常個体と比較して第一次運動野の錐体細胞の減少傾向が認められた。また、これまでに調べてきた第一次運動野損傷後の回復過程において、回復の途中で把握方法の行動戦略が変わるときに成功率が低下する「回復の谷」のような行動学的な変化を、計算論モデルで表現することを共同研究によって試みた。この手法を用いて脳損傷後の回復において、どのような運動学習の成分が重要になっているのかについて検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
行動実験及び組織学的実験を中心に研究を進めることができた。工学分野との共同研究を開始し、新たな視点から分析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
内包梗塞を作成した動物モデルに対して、把握動作課題を行い、損傷による影響を明らかにする。詳細な行動データを取得するために、把握動作中の行動測定を行うための機器開発を行う。損傷後に起こる損傷による機能阻害や機能回復に関わる神経細胞内の変化を組織学的手法を用いて明らかに、損傷後の経時的な神経の変化を明らかにする。計算論モデルを使用して、運動野損傷後の機能回復に関わる学習成分の変化について検討する。
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