研究領域 | 新興国の政治と経済発展の相互作用パターンの解明 |
研究課題/領域番号 |
16H00740
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
吉田 信 福岡女子大学, 国際文理学部, 准教授 (60314457)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 旅券 / パスポート / 国籍 / 国境 / 市民権 / 移動 / 植民地 / 帝国 |
研究実績の概要 |
本研究は,2年の期間で実施するものである。1年目にあたる年度では,おおむね次の実績をあげることができた。 1)史資料の収集 初年度は,ロンドンおよびオランダにおいて史資料の収集をおこなった。ロンドンでは国立公文書館において,英領マラヤ,シンガポール,他各国の英国領事館において発給された旅券の実物を閲覧した。これにより,旅券のフォーマットが時代ごとおよび発給地によって変わっていたことが確認できた。さらに,旅券のフォーマットがその後統一されていく過程をたどることができた。旅券の実物を閲覧した他,英国における旅券規則を調べ確認した。これら一連の調査によって,英領植民地における旅券制度の変遷についてその概要を把握した。 オランダでは,ハーグの国立公文書館,ライデン大学図書館に併設されている王立言語地誌民族学研究所収蔵資料を調査した。この調査によって蘭領東インドで発給された旅券の現物を確認できた。確認できた旅券としては,19世紀半ばの近代的旅券制度が確立する以前に用いられた渡航証明書からはじまり,第二次大戦後に発給された蘭領東インドからオランダ本国への渡航に際して用いられた各種の証明書を含んでいる。 2)成果の公表 初年度はいくつかの研究会において成果を公表する機会に恵まれた。とりわけ,オランダのライデンに位置する王立言語地誌民族学研究所において報告することができた。さらに,調査の過程で入手した史料を一部用いて論稿の執筆をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の進捗状況としては,国内外での史資料の収集がある。国外では英国およびオランダの公文書館において調査を実施し,一次史料を確認できた。さらに,オランダでは個人コレクションの史料についても確認・入手ができ,初年度としては貴重な史料を収集できたと評価している。 史資料の収集に加え,複数の研究会において本研究課題の概要および収集した史資料の紹介を兼ねた報告等をおこなうことができた。内訳としては研究会等での報告が5件,これには国外の研究機関での報告1件が含まれている。5件のうち英語での報告が2件(国外研究機関1件,国内研究機関1件)であり,研究成果の中間報告という点で成果があった。国外の研究機関での英語報告は,オランダの王立研究所でのものであり,当初の想定を超えるものと評価すべき内容である。 また,印刷中の共著書に掲載される原稿を執筆している。この原稿には調査の過程で入手した史料を用いている。これらの点を総合的に評価すると,当初の想定以上に進行しているとも判断できるが,留保して順調な進行とした。
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今後の研究の推進方策 |
2年計画の最終年度となる本年は,引き続き史資料の収集を進めるとともに研究成果の公表もおこなう予定である。 史資料の収集は,引き続き英国ロンドン,オランダのハーグ等で実施する予定であるが,今年度は可能であれば旧英領,旧蘭領の植民地であったシンガポール,マレーシアおよびインドネシアにおいても調査を実施したいと考えている。これらの調査地において,旅券制度構築期にいかなる出入国管理体制がおこなわれていたのかを把握することが目的である。 研究成果の公表としては,すでに6月末にソウルで開催予定の国際学会において研究成果を一部報告することが決定しており,報告内容は英語による原稿にまとめることを検討している。加えて,国内の研究会でも報告をおこない,学会誌・紀要等を含め研究成果の公表をおこなうこととしたい。
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