今年度は,2度の海外調査に加え,海外において開催された国際学会において報告,さらに研究成果の一部を論稿として公表することができた。 海外調査は,ロンドンの国立公文書館および大英図書館で実施し,英国の旅券に関する資料の収集・解読を進めた。英領マラヤをはじめとして,保護領などでも発給された旅券のサンプルを調べたのみならず,19世紀末から第一次大戦期までの旅券の発給手続きに関する外務省の規則も調べることができた。また,オランダのハーグに位置する国立公文書館,ライデン大学図書館での調査も実施し,オランダにおける旅券制度の展開,植民地旅券の変化などを調べることができた。オランダの旅券制度については,オランダ本国における旅券制度に関する歴史的な変遷を調べたのみならず,オランダ領東インドにおいて発給された旅券のサンプルを19世紀末から20世紀初頭までたどり,植民地旅券の様式および機能の変遷を整理した。 2016年より開始した本研究の成果の一部は,2017年6月にはソウルで開催されたAAS(Association for Asian Studies)-in-Asia 2017会議において,植民地間の移動と旅券の問題に関する報告(Proving ‘Japaneseness’: passport control and the problem of identification in the Dutch East Indies)として発表する機会にめぐまれた。ここでは,台湾とオランダ領東インドという植民地間の人の移動と旅券制度の展開を整理し,口頭で発表した。 これらの研究成果の一部は,2018年3月に論稿としてまとめ,公表している(「オランダ領東インドにおける旅券制度の展開」『国際社会研究』第7号)。今後は,残された課題をさらに究明すべく,研究活動を継続して実施したい。
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