公募研究
病原性微生物がホスト細胞に障害を与えるために産生する膜孔形成毒素は,可溶性の単量体として分泌されるが,ターゲット細胞に接すると膜上でpreporeと呼ばれる円状の会合体を形成した後,劇的な構造変化を起こして膜孔を形成する.黄色ブドウ球菌は,3種類の非常に類似した膜孔形成毒素(Hla,LukF,Hlg2)を分泌するが,Hlaはホモ7量体の膜孔を形成するのに対し,LukF,Hlg2は交互に会合したヘテロ8量体の膜孔を形成する.毒素同士がどのようにして特定のパートナーとのみ特異的に会合して膜孔を形成するのか,また,7量体・8量体という分子の会合数がどのようにして決定されるのかについては,明らかにできていない.本課題では,構造解析から提唱された機構を基に変異体蛋白質を合理設計し,毒素の会合特性を改変することを通して,これらの毒素の自己組織化機構を解明する.平成28年度は,HlaとLukFの相同性が高いことに着目し,Hlaの特徴的な配列領域をLukFに導入した.具体的には,N末端アミノラッチ領域をHlaの配列に置換したLukF(LukF-Mu1)と細胞膜結合領域をHlaの配列に置換したLukF(LukF-Mu3)の発現ベクターを作成した.また,これらの蛋白質を大腸菌発現系により大量発現させ,Niアフィニティークロマトグラフィーにより精製した.各蛋白質とも機能解析に十分な量の試料が得られた. LukF-Mu1については,MPD添加による会合体形成能を評価したが,自発的な会合は確認できなかった.
2: おおむね順調に進展している
機能改変を目指した2種類の変異体をデザインし,その発現系を構築できた.次年度に機能解析するために十分な量の試料を得ることができており,当初の計画は順調に進んでいると判断した.
得られた変異体蛋白質の溶血活性を,ヒト赤血球を用いて評価する.分子特性の変化が確認できた場合は,その立体構造解析を行う.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
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