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2016 年度 実績報告書

アクチン骨格超分子集合体の動的秩序形成機構と細胞機能発現機構

公募研究

研究領域生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現
研究課題/領域番号 16H00749
研究機関東北大学

研究代表者

水野 健作  東北大学, 生命科学研究科, 教授 (70128396)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード細胞・組織 / シグナル伝達 / 細胞骨格
研究実績の概要

本研究では、アクチン細胞骨格の動的秩序形成機構とその細胞機能について研究を実施し、以下の結果を得た。
1)細胞の力覚応答におけるアクチン骨格動的秩序の機能解析:細胞に対する張力刺激依存的なRhoAの活性化に関与するRho-GEFとして同定したSoloについて、結合タンパク質を解析し、SoloはケラチンK8/K18に加えて、ヘミデスモソーム構成タンパク質であるプレクチンやインテグリンと結合することを見出した。また、Soloの発現抑制によって、ヘミデスモソーム形成が抑制されることを見出した。
2)3次元組織構築におけるアクチン骨格動的秩序の機能解析:MDCK細胞をHGF存在下にコラーゲンゲル内で3次元培養すると、管腔様構造を形成する。Soloの発現抑制によって、管腔構造が球形化し、内腔の占める割合が有意に増加した。また、収縮力のマーカーとして二重リン酸化ミオシン軽鎖(ppMLC)の免疫染色を行ったところ、内腔側でのppMLCの低下が認められた。これらの結果から、Soloは、管腔形成において、アクトミオシンの収縮力を制御し、管腔の長い形状と内腔の体積の制御に関与していることが示された。
3)接触阻害による細胞増殖阻害におけるアクチン骨格動的秩序の機能解析:アクチン骨格の重合・脱重合と細胞増殖に関わる転写制御因子YAPの活性の関係を明らかにするため、アクチン重合や脱重合を促進する薬剤のYAPの細胞内局在に対する影響を調べた。その結果、サイトカラシンやラトランキュリンのようなアクチン脱重合剤だけでなく、アクチン重合剤であるジャスプラキノライドでもYAPの核外移行と不活性化が誘導されることを見出した。ジャスプラキノライドは、細胞の球形化や接着の低下によってSrcの不活性化を誘導し、その結果、YAPの核外移行と不活性化を誘導することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、1)細胞の力覚応答、2)3次元組織構築、3)増殖制御、におけるアクチン細胞骨格の動的秩序形成の機能について研究を実施し、以下の結果を得た。1)細胞の力覚応答に関与するRho-GEFとして同定したSoloが、ヘミデスモソーム構成タンパク質と結合すること、また、Soloの発現抑制によってヘミデスモソーム形成が抑制されることを見出し、Soloのヘミデスモソーム形成における重要性を明らかにした。また、2)MDCK細胞の3次元培養で形成される管腔構造が、Soloの発現抑制によって、球形化し、内腔の体積が増加することを見出した。また、Soloの発現抑制によって内腔側での二重リン酸化ミオシン軽鎖が低下することを見出し、管腔形成においてSoloによる収縮力の亢進が重要な役割をもつことが示された。さらに、3)アクチン重合剤であるジャスプラキノライドによって、細胞の球形化や接着の低下が起こり、その結果、YAPの核外移行と不活性化が誘導されることを見出した。
以上のように、各項目について成果が得られたことから、おおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

今後は、1)細胞の力覚応答、2)3次元組織構築、3)増殖制御におけるアクチン細胞骨格の動的秩序形成の機能の各項目について、以下のように研究を実施する。
1)細胞の力覚応答におけるアクチン骨格動的秩序形成機構と機能解析:細胞の力覚応答に関与するRho-GEFとして同定したSolo及び他のRho-GEFについて、結合タンパク質、力負荷依存的な活性変化、リン酸化、局在変化などを解析し、力学的刺激依存的なRho-GEFの活性化機構と、下流のアクチン骨格、ケラチン繊維の動的秩序形成機構を解明する。蛍光イメージング法を用いて、力学的刺激に応答したアクチン骨格の動態を可視化解析し、ケラチン繊維やヘミデスモソームなどの接着装置との協調的な作用機序を解明する。
2)3次元組織構築におけるアクチン骨格動的秩序の機能解析:MDCK細胞の3次元培養による管腔形成過程における各細胞のトラッキング解析や、アクチン、カドヘリンなどの動態を解析する。細胞骨格制御因子やSoloなどの力覚応答分子の発現抑制の効果を解析し、3次元組織構築におけるこれらの分子の機能を解明する。また、張力センサープローブを開発し、組織形成過程における張力分布と細胞骨格動態の相関を解析する。
3)接触阻害による細胞増殖阻害におけるアクチン骨格動的秩序の機能解析:細胞の高密度培養による増殖阻害(接触阻害)におけるアクチン動態とYAPの活性制御の役割を解明する。アクチン骨格の重合・脱重合により活性制御されるプロテインキナーゼやホスファターゼを同定し、アクチン骨格の動態変化によるYAPの活性と局在化の制御機構と、その結果生じる細胞増殖の制御機構を解明する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] University of Heidelberg/German Cancer Research Center(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Heidelberg/German Cancer Research Center
  • [雑誌論文] Roles of the cytoskeleton, cell adhesion, and Rho signaling in mechanosensing and mechanotransduction.2017

    • 著者名/発表者名
      Ohashi, K., Fujiwara, S., and Mizuno, K.
    • 雑誌名

      J. Biochem.

      巻: 161 ページ: 245-254

    • DOI

      10.1093/jb/mvw082

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A pleckstrin homology-like domain is critical for F-actin binding and cofilin-phosphatase activity of Slingshot-1.2017

    • 著者名/発表者名
      Takahashi, K., Okabe, H., Kanno, S., Nagai, T., and Mizuno, K.
    • 雑誌名

      Biochem. Biophys. Res. Commun.

      巻: 482 ページ: 686-692

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2016.11.095

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Coordination of cellular dynamics contributes to tooth epithelium deformations.2016

    • 著者名/発表者名
      Morita, R., Kihara, M., Nakatsu, Y., Nomoto, Y., Ogawa, M., Ohashi, K., Mizuno, K., Tachikawa, T., Ishimoto, Y., Morishita, Y., and Tsuji, T.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 11 ページ: e0161336

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0161336

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pharmacological inhibition of centrosome clustering by slingshot-mediated cofilin activation and actin cortex destabilization.2016

    • 著者名/発表者名
      Konotop, G., Bausch, E., Nagai, T., Turchinovich, A., Becker, N., Benner, A., Boutros, M., Mizuno, K., Kramer, A., and Raab, M. S.
    • 雑誌名

      Cancer Res.

      巻: 76 ページ: 6690-6700

    • DOI

      10.1158/0008-5472

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] メカノセンシングにおける細胞骨格、細胞接着の機能2016

    • 著者名/発表者名
      藤原佐知子、大橋一正、水野健作
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 88 ページ: 443-451

    • 査読あり
  • [学会発表] 動物細胞の力覚応答における細胞骨格の役割2016

    • 著者名/発表者名
      水野 健作、藤原 佐知子、大橋一正
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 国立大ホール(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
    • 招待講演
  • [学会発表] 力覚応答に関与するRho-GEF, Soloの上皮細胞の管腔形成における機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      大橋一正、西村 亮祐、藤原 佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜 国立大ホール(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] メカノストレス応答に関与するRho-GEF, Solo の上皮管腔組織形成における役割2016

    • 著者名/発表者名
      西村 亮祐、大橋一正、藤原 佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      第68回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府・京都市)
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17
  • [学会発表] 上皮細胞の力覚応答と細胞骨格制御に対するRho-GEF Solo の機能2016

    • 著者名/発表者名
      藤原 佐知子、大橋一正、水野 健作
    • 学会等名
      第68回日本細胞生物学会大会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府・京都市)
    • 年月日
      2016-06-15 – 2016-06-17
  • [学会発表] 上皮管腔組織形成におけるSolo の機能解析2016

    • 著者名/発表者名
      西村亮祐、大橋一正、藤原佐知子、水野 健作
    • 学会等名
      日本生化学会東北支部第82回例会・シンポジウム
    • 発表場所
      弘前大学(青森県・弘前市)
    • 年月日
      2016-05-21 – 2016-05-22
  • [備考] 東北大学 大学院生命科学研究科 情報伝達分子解析分野 水野研究室

    • URL

      http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/mizuno_lab/

URL: 

公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-01  

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