研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00752
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
真行寺 千佳子 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (80125997)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子モーター / 生物物理 / タンパク質 / 細胞 / 運動 |
研究実績の概要 |
本研究では、真核生物鞭毛の振動運動に着目し、鞭毛の柔軟な運動特性を生み出している軸糸内の微小管上に規則的に配置されているモータータンパク質ダイニンの高度に組織化された活性制御機構の解明を目指した。具体的には、ダイニン分子の自律的応答能の理解と誘導条件の解析、及び自律的秩序形成の解析という2点から目的を達成することを計画した。28年度には、主にガラス面に付着させたビーズと相互作用させたダイニンによる微小管の滑りの挙動が外部からの変形により変化する過程を解析する計画であったが、ビーズとダイニンとの相互作用の定量的制御が狙い通りには実現できなかった。そこで、計画を変更し、低濃度ATP下における不動鞭毛の屈曲誘導の予備実験とその解析を行なった。この実験は、うに精子の膜を取り除いた除膜精子を用いる。除膜精子は、通常、1-5 mM程度のATPを与えると、生きている精子と同じような波形と周波数で振動運動を示す。振動を示す閾値濃度は3microM付近と言われている。本実験では、ATP1.5-2.5microMという閾値以下の条件でも、鞭毛にある一定の変形を与えると鞭毛の基部に作られた屈曲が成長し、伝播すること、さらに屈曲が成長を伴う条件では、最初の屈曲の伝播に伴って、最初の方向とは逆方向にも誘導されること(つまり振動の単位となる屈曲の切り替えが起こること)を見いだした。先行研究では、屈曲の伝播が初期段階の反応であり、それが切り替え型に変化すると解釈されていたtが、伝播と成長とは独立の現象であるらしいことが示された。屈曲が伝播を開始する場合も成長に変化する場合も、最初についになる互いに逆向きの一対の屈曲形成が重要である。屈曲が切り替えを伴って振動の芽生えを示すには、この一対の屈曲が伝播しながら減衰することが重要であることもしめされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画を変更したことにより遅れが生ずるかと思っていたが、不動鞭毛の屈曲誘導の実験系が、ダイニン分子の自律性、及び自律的秩序形成の解析を推進するのに適していることがより明確となり、さらに安定した結果が得られたことにより、ほぼ順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画を変更したが、不動鞭毛の屈曲誘導の実験系が、ダイニン分子の自律性、及び自律的秩序形成の解析を推進するのに適していることが明確となったので、この方針で解析をさらに発展させる。
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