研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00753
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
養王田 正文 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50250105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | シャペロニン / プレフォルディン / シャペロン / フォールディング |
研究実績の概要 |
好熱性真菌Chaetomium thermophilum由来プレフォルディン(CtPFD)の大腸菌での発現系を構築した。C. thermophilumのmRNAから合成したcDNAを鋳型として用い、CtPFD各サブユニット遺伝子をPCRでクローニングした。また、PFD3の末端にStrep-tagを付加した。それぞれのサブユニット遺伝子をpETベクターに導入して構築した発現プラスミドで大腸菌を形質転換し、各サブユニットの大量生産系を構築した。各サブユニットを発現する大腸菌の菌体破砕液を尿素変性させ、発現したサブユニットがほぼ等量になるように混合し、段階透析を行うことによりCtPFDオリゴマーの再構成を行った。Strep-tag を用いたアフィニティークロマトグラフィーを行った後、サイズ排除クロマトグラフィーにより精製を行った。MALDI-TOF-MS 解析を行ったところ、6種類のサブユニットの分子量に対応するピークが観測された。しかし、一部のサブユニットが欠損したCtPFD複合体の存在が確認され、SDS-PAGEでPFD2とPFD6の分離が困難なため、SDS-PAGEで組成を確認できないという問題があった。そこで、PFD2のC末端にHis-tagを付加し、2種類のアフィニティークロマトグラフィーによる精製とSDS-PAGEによる識別を可能とした。クエン酸合成酵素の熱凝集抑制能を有さず、アクチンの捕捉能を確認した。また、C. thermophilum 由来CCT(CtCCT)において表面に存在するCysを除去し、Helical Protrusionの先端にCysを付加した変異体を大腸菌で構築し、X線一分子追跡法(DXT)で運動を解析し、古細菌型と同様に回転運動することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
C. thermophilum由来プレフォルディン(CtPFD)の発現、精製及び機能解析に成功した。また、C. thermophilum由来CCT (CtCCT)のX線一分子追跡法(DXT)による解析も行った。これまで不可能であった真核生物由来プレフォルディン及びCCTの構造・機能及び協調作用機構を可能とする重要な成果である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに構築した好熱性真菌Chaetomium thermophilum由来プレフォルディン(CtPFD)と2型シャペロニン(CtCCT)の大腸菌での組換え体生産系を用いて真核生物型プレフォルディンー2型シャペロニンシステムのダイナミクスとタンパク質フォールディング機構の解明を行う。CtCCTのATP依存的構造変化機構をX線一分子追跡法(DXT)で解析する。さらに、ビアコアと高速AFMを用いてCtPFDとCtCCTの相互作用機構の解析を行う。高速AFMによる解析は熊本大学発生医学研究所小椋光教授との共同研究で行う。予備実験で、AFMでCtPFDとCtCCTの複合体の観察に成功しており、高速AFMでその結合と解離の過程を観察する。ビアコアでは、解離と結合の速度論的解析を行う。真核生物学プレフォルディンと2型シャペロニンは多数のサブユニットから構成される複雑な構造をしてることから、それぞれのサブユニットの機能の解明が重要である。いずれも精密な構造は解明されていないことから、X線結晶構造解析を目指した結晶化を進める。また、スペイン高等科学研究院のValpuesta教授との共同研究でCtPFD-CtCCT複合体の構造をCryo電子顕微鏡により解析する。複合体形成におけるそれぞれのサブユニットの相関係を明らかにするために、クロスリンク実験により相互作用するサブユニットのペアを特定する。また、それぞれの分子構造解明のためにX線結晶構造解析を行う。タンパク質フォールディングについては、最も主要な基質であるアクチンを材料として、CtPFDからCtCCTへの受け渡しとフォールディング機構を解析する。
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