研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00755
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
上野 隆史 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (70332179)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | タンパク質工学 / ファージ / 超分子化学 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者が見出した人工蛋白質針の細胞膜貫通機構の全容理解を目的とし、蛋白質工学と高速AFM観察、計算化学、電気生理学測定を組み合わせ、分子針の細胞膜貫通駆動力と、細胞膜への相互作用機構を解明を目指す。申請者が作成したT4ファージ由来の全長15 nm、直径2.4 nmの人工蛋白質針は、温度、pH、有機溶媒に対して高い安定性を有し、様々な機能分子をアミノ酸の化学修飾により複合化できることを報告している。さらに、非常に高い効率で細胞を直接透過し、細胞内でも分解されずに安定に存在することも見出している。そこで、平成28年度は、蛋白質針とモデル脂質二分子膜の相互作用を高速AFM観察し、その画像解析をおこなう。さらに、高速AFMより得られた動的情報と、モデル脂質二分子膜を用いた電気生理学測定をもとに計算化学実験をすすめた。それらの結果から、人工蛋白質針の動的機能の解明をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記に示す3について、計画より早く知見を得ることができたため。 (1)高速AFM観察:研究の要となる高速AFM測定では、マイカ基板上へ吸着した人工蛋白質針を脂質二分子膜の端へ相互作用させることによって、膜貫通プロセスを二次元的な運動として1分子観察した。(2) MD計算:高速AFM解析によって得られた蛋白質針と脂質膜との接触角、接触保持時間、挿入速度をパラメーター化し、それらの構造情報をもとに、MD計算を進めた。(3)電気生理学測定:液滴接触法による脂質二分子膜作成から、迅速測定系を構築し、脂質膜透過と膜間電位差の関係を明らかとした。。さらに、針先構造の異なる蛋白質針の合成を行い、上記の実験による膜透過能の比較から、膜透過メカニズムの全容を解明する準備がととのった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のターゲットであるT4ファージの分子針先端の構造を置き換えた蛋白質針を作成し、実験データと計算結果の比較により、細胞膜貫通と針先端部分の関係について評価する。
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