公募研究
カルシトニンは甲状腺から分泌されカルシウム代謝に重要な役割を果たしているペプチドホルモンであるが、高濃度中性水溶液中でアミロイド様線維を形成して沈殿する性質を持っている。膵臓から分泌され血糖値を上昇させることに働くグルカゴンも、アミロイド様線維を形成しアポトーシスを誘発することが知られている。これまで、カルシトニンに関しては酸性および中性条件でのカルシトニンのアミロイド線維形成機構について研究した結果以下の研究成果が得られた。1)カルシトニンはモノマーから核が形成される核形成反応(k1)を経て核にモノマーが吸着して線維が伸長する線維伸長反応(k2)の2段階の反応、すなわち2段階自己触媒反応機構で線維形成することが判明した。2)中性条件で線維は逆平行b-シートを形成してb-ストランドに垂直な方向に成長する構造を明らかにした。また中央部のPhe16, Phe19はb-シート構造の安定化に寄与していることが判明した。3)2)の結果を踏まえて、PheをLeuに置換したhCT変異体では線維伸長反応速度が格段に遅くなる結果が得られた。Pheの相互作用が弱まり、線維の安定性が下がったためであることが判明した。4)今年度はクルクミンを添加してhCTの線維形成速度を算出したところ、核形成反応が格段に遅くなることが判明した。クルクミンがhCTモノマーと相互作用を形成するため、モノマー同士の会合能が下がったためであると結論した。グルカゴンについては酸性水溶液条件で中性リン脂質DMPC存在下でアミロイド様線維形成速度を観測したところ、酸性水溶液中に比べて、核形成速度は促進され、線維形成速度は阻害されることが判明した。グルカゴンは膜存在下ではN-端のb-シートが形成されず、C-末端でのみb-シートを形成することから、膜中では線維の安定性が下がり、線維伸長速度が遅くなったと結論した。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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