公募研究
脂質ラフトはコレステロールやスフィンゴ脂質に富んだ秩序性の高い領域で、近年その生理的重要性が認識されてきた。一方で、生成と崩壊を繰り返しつつ自己組織化しているため、特に生細胞膜におけるラフト形成の分子基盤は未解明のまま残されている。申請者はこれまで安定同位体標識した脂質の化学合成とNMRを組み合わせる独自の手法で、脂質の動的挙動および分子間相互作用の解明に取り組んできた。また、本新学術の第一期では、時間分解能の高い蛍光寿命測定や共焦点蛍光顕微鏡を導入し、成果を挙げてきた。本申請では、第一期において有用性が明らかとなった蛍光スフィンゴミエリンの設計指針に基づいて、新たに各種脂質の蛍光体を開発し、蛍光観察による脂質膜動的秩序解析の高度化を図る。さらに、単純な人工膜でなく、より多成分系膜、特に脂質の外葉と内葉の組成の異なる非対称膜、さらには生細胞膜へと研究対象を拡大していくことを目指す。本年度は、まずラフト集積性を高めるために、スフィンゴミエリンの二重結合を還元して単結合にしたジヒドロスフィンゴミエリンに対して蛍光標識を行った。その結果、ラフト集積性がスフィンゴミエリンよりも2割ほど高まることが分かった。さらに生理活性脂質として知られるセラミドについても蛍光標識を導入し、セラミドの挙動を再現できることを明らかにした。現在、これらの蛍光脂質に関して人工膜でのデータ取得は終了し、生きた細胞膜での脂質の挙動解析を行っている。また、H29年度に実行予定であった非対称脂質膜の調製にも着手し、あらたな非対称膜調製方法の目途をつけることができた。
2: おおむね順調に進展している
本年度調製予定であった蛍光脂質のうち、いくつかの調製は終了した。また、H29年度に予定していた生細胞の脂質膜における蛍光脂質の挙動解析、および非対称脂質膜の調製を前倒しでH28年度から開始していることから、順調に研究が進捗している。
引き続き蛍光脂質の調製とそれに続く生細胞や非対称膜での顕微鏡観察を行う。また、領域内での共同研究を進めるために、これらの蛍光脂質を提供していく。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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