研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00775
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
片山 勉 九州大学, 薬学研究院, 教授 (70264059)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 蛋白質 / 細菌 / 遺伝子 / 生体分子 / バイオテクノロジー / DnaA / 染色体DNA複製 / in vitro再構成系 |
研究実績の概要 |
染色体DNA複製の開始反応の制御においては、複数の高次複合体が連係し秩序だって機能する。大腸菌では複製開始蛋白質DnaAがその要となる。研究代表者は、大腸菌の染色体DNAの複製系とその制御系について、多数のin vitro再構成系を独自に構築して、重要な制御系の解明に成功してきた。本研究はこれまで個々に解析してきたこれらのin vitro再構成系が連動して自律的に機能する、新たな動的秩序系を構築し、その分子動態を解析することを目的とした。DnaA蛋白質制御系では、活性型のATP結合型DnaA(ATP-DnaA)を不活性型のADP-DnaAに変換する系(DnaA-ATP加水分解反応系:DDAH系およびRIDA系)と、ADP-DnaAをATP-DnaAに変換する系(DnaA結合ヌクレオチド交換反応系:DARS1系およびDARS2系)とがある。本年度は、染色体の非コードDNA因子datAとDNA結合因子IHFとの複合体によりATP-DnaAがADP-DnaAに変換されるDDAH系と、染色体の非コードDNA因子DARS2とDNA結合因子IHF等との複合体によりATP-DnaAがADP-DnaAに変換されるDARS2系との連動系の開発を試みた。まず各系については反応条件や反応速度を詳しく解析した。その結果に基づき、最適と思われる数種の条件を用いてDDAH系とDARS2系が1本の試験管内で交互に反応するか検討した。その結果、特定の条件下でほぼ目的に近い結果が得られた。すなわち、ADP-DnaA分子がATP-DnaA分子に変換され、さらにADP-DnaA分子へと戻る周期的変動が観察された。これは、DARS2系とDDAH系とが連動して進行したことを示唆する。DARS1系とDDAH系との連動システムについても開発を進め、ほぼ同様な結果を得た。さらに並行して、DnaA蛋白質が複製起点やdatA因子、あるいはDARS1-2因子上で形成する複合体やそれらの分子機構についても解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
基本的には、DARS2(DARS1)系およびDDAH系による反応が連動して進行する新たな反応系が開発できたといえる。DnaA制御系そのものの基盤的理解を深めるための研究も並進させ、一定の成果が得られた。
|
今後の研究の推進方策 |
DARS2(DARS1)系―DDAH系連動システムについては、基本的には開発に成功したが、まだ改善の余地もあり、解析を続ける。また、DARS2(DARS1)系―RIDA系連動システム、および、その逆順となるRIDA系―DARS2(DARS1)系連動システムの構築を進める。これらの連動システムの効率を上げるために、各系の分子機構の解析や新たな制御因子の探索、解析も行う。
|