研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00781
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
三宅 弘之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (00271198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属錯体 / 光学活性 / 外部刺激 / ダイナミクス / らせん |
研究実績の概要 |
配位金属錯体は、特異な立体化学と動的な配位子交換特性をもち、それらを精密に組み合わせると、方向性のある空間の創出と時間発展の同時プログラミングが可能である。それらを刺激応答により自在にコントロールできれば、生体系で見られるような多段階の動的秩序形成の実現が期待できる。本学術領域研究では、キラルなペプチド配位子と置換活性な金属イオンにより構築されるらせん型配位錯体が多段階の動的構造変換を達成できることを基盤として、らせん型金属錯体や生体高分子の集積プログラミングを行い、共有結合のみから形成されるらせん分子では見られない、動的な構造変換過程の創出と、多元的な高次機能の探索を目指す。また、複数の外部シグナルに応答する動的構造変換系を超分子レベルで集積化し、自律的な時間発展を自在に操るタイムプログラミングも目指している。その過程において、本年度は以下の成果が得られた。 (1)動的らせん錯体を集積化した巨大らせん分子の創出と秩序形成 コレステロール側鎖を含むアミド型サイクレン錯体を種々合成し、それらの集積化スイッチングによるらせん型分子の創出とキラル空間を活用した分子認識を実現した。 (2)マレイミド末端を持つキラル錯体の合成と機能性官能基の相対秩序創生と動的変換 伸縮とらせん反転からなる多段階のスイッチングが可能なキラル錯体にマレイミド基を導入し、機能性チオール化合物の相対位置の秩序制御を行い、らせん情報の増幅と光物性などの動的変換スイッチングを目指している。配位子の合成およびナフタレンチオールの導入に成功を収め、円二色性挙動のスイッチングを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的なペプチド金属錯体からなる超分子集合体の秩序創生と動的変換について、研究計画に沿った具体的な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、研究代表者が独自に開発した、キラルなペプチド金属錯体の外部刺激による動的らせん反転スイッチングや、伸縮-らせん反転連続スイッチングを活用して、生体分子やらせん超分子錯体の集積化と構造変換プログラミング、さらにその過程におけるキラリティー情報の伝達・増幅システムの構築を目指している。そのために次年度は以下のアプローチを主として展開し、さらに、個々のアプローチにおいて速度論的研究を進め、指導原理の解明を目指す。 (1)動的らせん錯体の集積化と動的秩序形成 研究グループではこれまでに動的らせん錯体を活用して、外部刺激によるらせん構造の反転や伸縮運動を実現してきた。それら単核らせん錯体ユニットの集積化による動的挙動の相乗効果発現を目指して、単核らせん錯体を連結した多核金属錯体を新たに合成し、らせん錯体の外部刺激による構造変換挙動を詳細に検討する。先に合成した四核錯体では溶解性の問題のため外部刺激による弱い相互作用を効果的に活用できなかった。そのため配位子末端に疎水性の長鎖アルキル鎖を導入し、疎水性溶媒中における外部刺激応答性能を検討する。次年度は合成した金属錯体を用いて、化学量論的、および速度論的検討を行い、構造変換挙動を詳細に検討する。 (2)マレイミド末端を持つキラル錯体の合成と機能性官能基の秩序創生と動的変換 伸縮とらせん反転からなる多段階のスイッチングが可能なキラル錯体の両末端にマレイミド基を導入し、機能性チオール化合物の導入とそれらの相対位置制御によるらせん情報の増幅と分光学的特性の動的変換、および天然ペプチド鎖の集合状態の動的秩序変換スイッチングを目指す。マレイミド末端にはチオール基が特異的、かつ定量的に反応するので、らせん金属錯体の構造異性体とその動的変換により、導入した2つの官能基間のねじれた空間配置の固定化や動的変換を行う。
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