シアノバクテリアの生物時計は3つの時計タンパク質KaiA,KaiB,KaiCによって構成されている。3つのタンパク質が離合集散し、KaiCのリン酸化状態が約24時間周期で変動する。KaiAとKaiBはKaiCとの結合を周期的に変動させており,Kaiタンパク質これらとの複合体の形成は概日リズム形成に重要である。中心振動体として働くKaiCは、CIドメインとCIIドメインとよばれる2つのドメイン構造からなる。今回、六量体KaiCを構成する2つのリング構造を個別に精製し、それぞれのドメインの機能解析を実施した。精製タンパク質を用いて、リン酸化状態の解析およびゲル濾過クロマトグラフィーにより多量体構造変化を解析した。その結果、CIIリングがリン酸化修飾されることで、六量体から単量体に解離することを見出した。さらに、リン酸化されるアミノ酸残基を質量分析により同定したところ、KaiCの432番目に相当するスレオニン残基がCIIドメインでリン酸化されていることが明らかになった。一方、CIリングは常に安定な六量体を形成していることが確認できた。 さらに、温度変化によるKaiCのリン酸化変動を詳細に解析した。KaiCは4°Cにおいては、リン酸化状態は上昇し、30°Cにおいては低下することが知られている。そこで、4°Cから30°Cにおける温度範囲でのリン酸化の変動を解析した。リン酸化状態は10°Cを境に、それ以下の温度では上昇し、それ以上の温度では低下した。一方、CIIリングでは、温度が高くなるほど、リン酸化状態は大きく変動することが明らかになった。
|