研究領域 | 生命分子システムにおける動的秩序形成と高次機能発現 |
研究課題/領域番号 |
16H00785
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
秋山 修志 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 教授 (50391842)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | X線小角散乱 |
研究実績の概要 |
本課題では、シアノバクテリア生物時計システムの中核をなす時計タンパク質(KaiC)を題材に、X線溶液散乱や液中高速AFMを用いて分子内対称性やその動態を精査することで、細胞システム全体に表出する動秩序の本質に迫る。 X線溶液散乱では分子の大きさ・形状を生理的な溶液環境下で検証することができ、とくに散乱角度が大きい領域(広角)には分子の形状に応じた特徴的な信号パターンが現れる。微弱な広角散乱信号を定量的に測定・解析するため、独自に装置や解析ソフトウェアを整備して実験を実施した。その結果、KaiC6量体の分子内対称性に起因した相関ピークが広角領域にまで複数観察された。KaiCの結晶構造に基づいた理論的な散乱曲線に比べると、一部、ピーク位置のシフト、幅広化、消失などが確認され、分子内対称性の一部が損なわれている可能性が示唆された。今後は、実験データを説明する分子モデルを構築することで、6量体の対称性について詳細に検証する。 液中高速AFMでは1分子ごとに動態を観察することができる。平成28年度の研究活動を通じて、KaiCを基盤上に固定化し、その機能や構造を著しく損なうことなく1分子イメージングが実施できるようになった。野生型KaiCを注意深く観察したところ、リング状構造の対称性が低下した6量体が存在していた。対称性の低下とATP加水分解の関係を検証するため、系に含まれるATP濃度を変化させた実験を実施中である。今後は、X線溶液散乱から示唆される6量体モデルとの対応関係について考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究活動を通じて、KaiCを基盤上に固定化し、その機能や構造を著しく損なうことなく1分子イメージングが実施できるようになった。野生型KaiCを注意深く観察したところ、リング状構造の対称性が異なる6量体が存在することが明らかとなった。X線溶液散乱については、広角散乱を取得するための装置や解析ソフトウェアを整備した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、溶媒条件や温度を変えた液中高速AFM観察を実施し、6量体内の対称性が変化する時間スケールについても検証する。X線溶液散乱については、観察されたピーク位置・強度を説明するような6量体モデルを構築し、同時に、液中高速AFMのデータとの対応関係について考察する。
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